【論説】敦賀市立看護大で今春初めての卒業生が誕生した。卒業生53人のうち11人が市内の医療機関に就職し、地域の医療、看護を担う貴重な戦力となる。4月には大学院と助産学専攻科が開設。医療技術の高度化が進む中で、深い知識を身につけた人材の輩出と、知識の地元還元による貢献が一層期待される。

 敦賀市で看護を学ぶ場はかつて市立看護専門学校があった。2014年度の市立看護大の開校に合わせて募集を停止し17年3月に閉校、23年の歴史に幕を閉じた。今回の看護大の卒業生は専門学校の伝統も受け継ぎ、社会に出る第1回の卒業生になった。

 全国では近年、看護師を養成する学部などの開設が相次いでいる。毎年、10校前後が増え、新年度は新設予定を含めて国公私立合わせて258校に上る。その分、全国的に教員スタッフが不足する事態にもなっている。教員養成が大学増加のペースに追いついていない現状がある。

 市立看護大の大学院には救急・災害看護学、地域・在宅看護学、母子看護学の専門分野があり、それぞれに深い知識を習得する。新年度は定員の8人が入学する。医療現場で働きながら、夜間に勉学する人もいるという。大学院を出た人が市立看護大で教鞭(きょうべん)をとったり、職場のリーダーになったりするような人材の養成を期待したい。

 地元への貢献では昨年、敦賀消防団に学生15人が入団。全員がアメリカ心臓協会(AHA)が認定する一次救命処置資格を持ち、学校などに出向いて生徒らに心肺蘇生など専門知識を教えた。取り組みは新年度も引き継がれる。

 また、教授らが地域の依頼に応じて公民館などに出向いて市民公開講座を開いている。15年度は17件、16年度は13件と、健康づくりや介護予防が求められる中で、看護や医療の知識を地元に広く理解してもらう狙いがある。

 市立看護大の本年度の一般前期の受験倍率は8・4倍、後期も10・6倍で、今年も高い倍率をくぐり抜けた学生が入学する。先に行われた卒業式で交野好子学長は第1期生が地域の中で果たしてきた役割に触れつつ、「社会人として生きることは人と人とのつながりを構築していくこと。その力は大学の4年間の活動が基盤になる」と指摘した。看護職者である前に、社会人としての力を養うべきとの思いだ。

 技術の高度化とともに、最期までもっと人間らしく生きるといった方向に医療も向かう。医療技術を身につけることはもちろん、人に寄り添う力を持つために地域活動に励み、豊かな人間性を育む人材育成が今後も求められる。

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