【越山若水】踏まれても踏まれてもなお生きる―。これが雑草のイメージだとすれば、代表格はオオバコだろう。田舎道の傍らでよく見かけ、平べったく広がる葉が特徴である▼年配者は記憶にあるだろう。子どものころ、花茎を二つ折りにして互いに引っ張り合う草相撲で遊んだことを。だから地方によってスモウトリグサとも呼んだ▼オオバコは漢字で「大葉子」と書く。この大きな葉が柔らかさと硬さを併せ持つ。柔らかさは衝撃を吸収する一方、葉の中を通る丈夫な筋は耐久性を高めるらしい▼でも踏まれることに耐え忍んでいるだけではない。学名の「プランターゴ」はラテン語で「足の裏で運ぶ」という意味。漢名では「車前草」と書くように、人や車で自分の種子を運んでもらう戦略だ▼つまりオオバコは踏まれることを利用している。逆境の環境をむしろプラスに捉え、道路沿いでたくましく育っている。植物学者、稲垣栄洋(ひでひろ)さんの著書に教わった話である▼ここで俳句を一句。「車前草の花は踏まるるべく咲きぬ 吉井恭子」。歳時記では夏の季語ではあるが、入進学など春の転機のシーズンに紹介したい▼新天地に飛び立つ今、待ち受ける厳しさにばかり目が行く。それを乗り越えるエネルギーを思うと気は重くなる。しかし逆境は自分を大きく育てる栄養と考えたい。踏まれても強く生きるオオバコが好例である。

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