いじめられた過去を振り返り「周りの大人が助けてあげて」と訴える女性=2月、福井県坂井市

 ■記憶から消す

 同級生たちだけでなく、先生の心ない対応にも、何度も傷つけられた。親の職業を答えるという授業のとき、父親が行方不明だったため、手を挙げられずにいた。すると女性の先生からひどく怒られた。

 あるとき、運動会用として、白い布を渡され、鉢巻きを作ってくるように言われた。母親はほとんど家を空けており、貴子さんは家にあった赤い糸で鉢巻きを縫った。先生はクラス全員の前で「誰? こんな赤い糸で縫ってきたのは」と大声で言い放った。家庭環境を知っているはずなのに、熱で1週間休んでも様子を見にすら来なかった。

 高校を卒業し、仕事のため上京。文集やスナップ写真など、小学校時代のものは全部捨てた。記憶から消すためだった。当時の記憶は今の家族にすら打ち明けていない。

 ■誕生日ケーキ

 厚生労働省によると、2015年の「子どもの貧困率」は13・9%(7人に1人)。ただ大人1人で子どもを育てる世帯の貧困率は50・8%と極めて高い。

 「貧困といじめは深くかかわっている。きっと私と同じように苦しんでいる子どもがいる。生まれた境遇という理由で、人生に希望が持てないほど残酷なことはない」。貴子さんは、いじめや自殺のニュースを目にするたびに抹殺したはずの過去がよみがえってくるという。

 子ども時代に救いだったのは、近所のおばあちゃんの存在。身内でもないのにいつも貴子さんを気に掛け、誕生日にはケーキを持ってきた。祭りのときは出前を取ってくれた。貴子さんは「優しい人が世の中にいることを知ったから、私はまっとうに生きてこられた」と涙を浮かべた。

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