何が何だかわからないおかしな電話です。

 しかし、日頃その人にはそのようなことはしばしばあることなので、亀ならこちらにあるからとりあえず来て下さいと、私も私で返事をしてしまいました。

 そして当日、駅に出迎えたその足で、その人を亀島に案内したのです。それも亀島の全姿が一番よく見える二枚田幹線を少し登った所です。

 亀島を見下ろすその地点に立った友人は「あっ! 亀」と言ったきりその場に立ちすくんでしまいました。そしてしばらくの間身動きもしないで亀島を見つめていました。それからおもむろに「加藤さん、亀の形をした島がここにこうしてあるということは、偶然ではなく必然なのよ」と。その言葉は私に向かってではあっても、まるで彼女自身に言い聞かすように話されるのです。「そして、この亀は、いったいどこへ向かって行こうとしているのかしら?」と、誰に聞くともなしに呟かれるのです。

 『ふるさとへの思いから―越前水仙に導かれて― 』拙著より抜粋

―雄島、雌島―(平成3年起稿)

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