事件現場を調べる捜査員=13日、福井市

 同居する70代の実母を刃物のようなもので殺したとして、福井県警福井南署は13日、殺人の疑いで福井市の飲食業の男(49)を現行犯逮捕した。同署によると容疑を認めている。

 「あんなに仲が良かったのに信じられない」。容疑者の逮捕を知った近所の住民らは一様に言葉を失った。容疑者と母の野中キリさん(76)が2人で切り盛りしていたうどん店は有名な繁盛店。最近も仲良く働く姿が見掛けられていただけに、住民は「なぜこんなことに…」と首をかしげた。

 近くに住む60代女性は「キリさんは明るく愛想のいい人。旦那さんが数年前に亡くなってから、お店を二人三脚で本当によく頑張っていた」と話す。容疑者は亡くなった父に代わり厨房を取り仕切っていたという。

 先代のころからの常連で容疑者をよく知るという女性(88)は「孫が帰ってきたらよく店に連れていった。いつも車がたくさん止まっていて、県外から食べに来る人もいた」と振り返る。事件については「そんなことをする子じゃない。親孝行な息子」と痛ましい事件に涙を浮かべた。

 2月の大雪のときには、容疑者の自宅前でスタックする車が続出。近くの住民と2人で30台以上を救出したという。一緒に救助に当たった50代男性は「人を助けようとする気持ちが強い人だった」と語った。

 一方で、従業員の女性がキリさんから聞いた話では、容疑者は7日に出掛け帰宅してから突然、精神面の調子を崩した。「お母さんを殺して俺も死ぬ」などと言いだしたため、キリさんは「家の中にある刃物を隠したんや」と言っていたという。

 容疑者が「つらい」と訴えたため10日は臨時休業し、従業員が11日、電話でキリさんに確認したところ「(容疑者は)落ち着いているが店は当分できない」と答えた。

 事件の数時間前、キリさんから総菜のおすそ分けを届けられたという70代女性は「12日の朝も2人で楽しそうに話しながらごみを出していた。(容疑者に)悩んでいるそぶりは全くなかった」と信じられない様子だった。

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