(C)2016 FILM TROOPE, LLC All Rights Reserved

 本作の主演は、2017年9月に逝去したハリー・ディーン・スタントン。トム・クルーズのように名前を聞いてすぐに分かるようなハリウッドスターではないので、ピンとこない方も多いと思いますが、1984年に公開されたヴィム・ヴェンダースの映画『パリ、テキサス』で主役を演じ、以降これまで100本以上の作品で印象的な脇役を演じてきた名優です。

 この映画は、ハリーの盟友であり、同じく名脇役として知られるジョン・キャロル・リンチが彼に当て書きして作った作品なのですが、監督のハリーへの尊敬と愛がたっくさん溢れた映画です。90歳のハリーが演じるのは、山々に囲まれた、ウエスタンに出てくるような田舎町に暮らすラッキーというおじいさん。朝起きて、地元のカフェに行って、仲良しの店員や、客と談笑するシーンから始まります。地元の人たちと何気ない会話をするだけのシンプルな数シーンで、ハリーが見せるふとした笑顔から滲み出るような優しさが伝わってきました。

 ある日倒れたことをきっかけに、人生の終わりを感じたラッキーはやけっぱちに缶を蹴っ飛ばします。たった一瞬のシーンなのに悲しくて切なくて愛らしい。ハリーにとって最後の主演作は、彼が紡ぎあげてきた俳優人生、そして多くの人に愛された彼自身の人生がスクリーンに刻まれた素晴らしい一本。今後の人生で、もしも死や、孤独や、寂しさへの恐怖に支配されそうになったら、ハリーが作中で見せた笑顔や力強い歌声が恋しくなって、この映画をまた観たくなることでしょう。★★★★★(森田真帆)

監督:ジョン・キャロル・リンチ

出演: ハリー・ディーン・スタントン、デヴィッド・リンチ

3月17日(土)から全国順次公開

関連記事
あわせて読みたい