不妊手術を施した証に、耳に切り込みを入れた「さくらねこ」。地域に戻し、一代限りの命を全うしてもらう=福井市内(福井犬・猫を救う会提供)

 「チチチチチ…」。道行く猫に合図を送ると、しなやかな体をひるがえし振り返る。しっぽをピンとたて、足にほおずりして餌をねだる。

 2016年9月、福井市内のある地域で、70代の老婦人がそんな野良猫たちに餌やりをしていた。善意からか、それとも孤独な思いを振り払うためか。

 1匹、また1匹と、どこからともなく集まってくる十数匹の野良猫。このままでは、どんどん増える。近所からの通報でNPO福井犬・猫を救う会の藤永隆一理事長が駆け付けて注意した。それでも老婦人は「餌はやっていない」と言い張る。「ずらーっと列になって猫が餌を待っているのに…」。藤永理事長はため息をつくほかなかった。

 同会は、地域にすみ着いた猫を捕獲することに決め、敷地内への立ち入りを許してもらうよう周辺の住民らを説得した。捕獲した子猫は毎月開いている譲渡会で里親を見つけ、人慣れが困難な3匹は会員が飼うことになった。

 残りの7匹は避妊去勢手術を会が費用負担して行い、地域に戻した。「Trap(捕獲)、Neuter(不妊手術)、Return(元の場所に戻す)」を略した「TNR」と呼ばれる活動だ。

   ■  ■  ■

 猫は年に3回、1度に5匹ほど出産するため「あっという間に増える」(藤永理事長)。TNRは「不幸な命に歯止めを掛けるために重要な活動」という。同会は2016年に70匹、17年は35匹にTNRを行った。

 不妊手術を行った猫の耳には、桜の花びらのような切り込みを入れる。一目で手術済みと分かるようにしたもので「さくらねこ」と呼ばれ、地域で一代限りの命を全うしてもらう。

 藤永理事長は「優しい気持ちから餌をやることで猫が居着き、どんどん産んで増え、ひいては子猫が殺処分される。餌やりをするなら不妊手術を徹底した上でしてほしい」と話す。猫が好きではない人から苦情が出ないよう、えさやトイレの場所を設けて、地域で連携して見守っていく必要性も訴える。

関連記事
あわせて読みたい