手前は1930(昭和5)年版の赤本。外傷の応急処置法が図入りで示されているページ。奥は現在流通している現代語版の赤本の表紙とカバー。増補もあって約1100ページある=福井県立歴史博物館

 発刊から約100年、現在までに1600超の版を重ね、累計発行2千万部という驚異のロングセラーがある。家庭医学書「家庭に於ける実際的看護の秘訣」、通称「赤本」だ。著者は福井市出身の元海軍看護特務大尉、築田多吉(つくだ・たきち)=1872~1958年。自らが実践し成果のあったさまざまな民間療法を紹介しており、その内容は驚くほど幅広く、多くの健康法がひしめく現代の民間医学のベースになっている。築田についてはこれまであまりクローズアップされてこなかったが、研究家らは「日本医学史に名を刻む偉人」とたたえる。

 ■“原点”は血

 築田は明治5年、足羽郡酒生村(現福井市荒木新保町)に生まれた。16歳のころ上京、洋服屋の徒弟や車引きなど職を転々とした後、海軍に入隊し看護兵となった。以後35年の各地での海軍病院勤務の間に病気治療の研究を重ねる一方、地方出身兵から郷里に伝わる民間療法や伝承薬を聞き取る作業を続けた。

 それらをまとめ、1925(大正14)年、53歳のときに発刊したのが「赤本」だ。当初は海軍関係者だけに配る予定で1万部が刷られたが、評判が口コミで広がり、関係者以外からも予約が殺到。増刷に次ぐ増刷となった。

 昭和30年代には1550版に達し、全国の多くの家庭に常備されていた。2007年に発刊された最新の赤本は1621版。孫の豊さん(79)=東京=は「正確には分からないが、現在までに2千万部近く出ている」と話す。生命の源は血液で、血流を良くすることが健康維持に重要との思いから表紙は全面赤にし、「赤本」の名も自身が付けたという。

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