永津紗世さん(左)ら家族に囲まれて幸せそうな赤ちゃん=13日午後1時50分ごろ、福井市新保2丁目の福井愛育病院

 「まだ、もうしばらく生まれないでね」。破水した永津紗世さん(41)=愛知県北名古屋市、福井市出身=は、圧雪によるガタガタ道の揺れに耐えていた。義姉の車で福井市内の病院に急ぐ。渋滞の状況は、早朝に出動した除雪業者の父が現場から携帯で連絡してくれた。記録的な大雪の混乱を家族の力で乗り越え、8日に授かった新しい命。「無事に生まれてきてくれて、ありがとう」。元気な産声に涙があふれた。

 2人目の子を里帰り出産するため、福井市内の実家で過ごしていた。予定日の3日を過ぎ、「いつ生まれてもおかしくない状況」に37年ぶりの大雪が重なった。同市の積雪は7日、140センチを超えた。「なんで今、こんなに降るの」。雪が落ち着くまでは産気づかないようにと、なるべく体を動かさずにいた。

 8日午前6時ごろ、破水した。万が一に備え、家の周りの雪は家族総出でどけてあった。すぐさま車で同市の福井愛育病院へ。義姉の奥村英里さん(44)が、雪で立ち往生する車両をかわして悪路を進んだ。「もう少し我慢して」。後部座席の紗世さんに励ましの声が飛んだ。

 「早く来て」。連絡を受けた夫の宗佑さん(41)は、愛知県から高速道路を飛ばした。雪道を想定し、弟から四駆を借りてあった。北陸自動車道を下りると、渋滞で一時ぴくりとも進めなくなった。病院では紗世さんの陣痛が始まっていた。分娩室に移った午前9時50分ごろ、宗佑さんがなんとか滑り込んだ。

 午前10時13分、3380グラムの元気な女の子だった。外にはまだ雪が降っていた。13日に退院日を迎え、「落ち着いた環境とは違って、いろいろ不安だった。家族の支えがあって本当に助かった」と紗世さん。宗佑さんは「大変なときに力強く生まれてきてくれた。頑張って生まれた分、この先は穏やかな人生を送ってほしい」と目を細めた。長女の瑛麻ちゃん(2)が、妹に優しくほおずりした。

 紗世さんの父奥村武寅さん(67)と兄高志さん(44)は建設業を営み、連日ほぼ寝ずに道路の除雪作業に当たっている。高志さんは病院に来る暇がなく、まだ赤ちゃんと対面できていない。紗世さんは働き詰めの兄を思いやり、「昼間に仮眠で帰ってくるときに会わせたい。少しは癒やしてあげられるかな」と、我が子を見つめた。

関連記事