【論説】どうやら峠を越えたようだが、油断はできない。「五六豪雪」以来の記録的大雪に見舞われた福井県内は徐々に除雪が進むものの、まだ日常生活からは程遠い状況だ。県民のイライラ感もピークに達している。大事なのは安全の確保であり、命を守ることである。共助による地域住民の連携を高め、行政と一体で苦難を乗り切りたい。

 幹線道路は復旧しても、住宅密集地の生活道路は除雪が思うように進まない。排雪場も満杯で新たな場所の確保に苦労している。

 まさに都市機能の脆弱(ぜいじゃく)な側面を露呈している。だがこうした状況は過去にも何度も経験してきた。1963年の「三八豪雪」、81年の「五六豪雪」以外にも、2006年には「平成18年豪雪」に見舞われた。また11年には南越前町今庄で観測史上最大の積雪244センチを記録、福井市でも1986年以来25年ぶりに100センチを超えていた。

 深刻だったのは死傷者が数多く出たことだ。県内では三八で31人、五六では15人が犠牲になっている。

 18年豪雪の犠牲者は五六に匹敵する14人に上った。12年前のことだ。屋根雪下ろし中の転落が6人、除雪中の体調不良など3人。その大半が高齢者である。過疎化が進み、除雪の人手不足が要因と指摘された。

 今冬はどうか。死者数5人、負傷者83人(13日午後1時現在)となり、雪下ろし中の高齢者1人が転落死。さらに除雪作業中のオペレーターが重機内で死亡、車内での一酸化炭素中毒死が3人に上っている。

 休む間もないほど過酷な作業を続けていた66歳男性オペレーターは心肺停止状態だった。1日3、4時間の仮眠を取っただけで、明らかな過労死に映る。「早く除雪を」、時に「遅いぞ」と市民から非難されることで、強い責任感が極限に達したのだろう。

 なぜ、このような悲惨な状況になったのか。建設業者の減少による重機、作業員不足という今日的課題にとどまらず、行政の除雪体制や指揮系統、官民連携のあり方まで徹底検証が必要だ。便利さに慣れ、自己本位の生活を当然視する市民感覚も問い直されよう。

 半世紀前の三八豪雪時はまだ「我慢する」「仕方がない」「お互いさま」といった生活観があった。オペレーターの死を決して無駄にしてはならない。

 一酸化炭素中毒による車中死も痛ましい。安全知識と用心深さがあれば防げたかもしれない。だが、山あいを走る坂井市の国道で雪に埋もれた状態で発見された富山県の19歳青年の場合は問題が残る。多忙とはいえ、SOSを発信したにもかかわらず県警や県の連絡体制や現場確認などの対応が遅れたのは事実だ。

 雪害は想像を超える災害を引き起こす。非常態勢には限界もある。だが、人命は守らなければならない。県はこれまで記録的な大雪に関し、課題検証を関係機関にも要請してきた。重要なのはそれがどう生かされたのか、生かされなかったのか、である。

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