【越山若水】「昭和元禄」は1964(昭和39)年、東京五輪の年に後の福田赳夫首相が言い出したとされる。高度経済成長による天下太平のご時世を江戸元禄期になぞらえた▼江戸時代、建前として庶民の旅行や物見遊山は禁じられていた。ただ巡礼の旅は除外され、講仲間によるお伊勢参りや富士山登拝など、寺社詣では盛んだった▼昭和元禄期は家族や社員の温泉旅行が大ブームに。海外旅行も自由化され12泊14日、40万円の欧州ツアーが登場したが、大卒初任給約2万円の時代には高嶺(たかね)の花だ▼当時の日本人の海外旅行者は10万人台にすぎず、100万人を超えたのは72年のこと。その後、ジャンボジェット機の就航や団体割引運賃の導入で大衆化が進み、90年にようやく1千万人を突破した▼今や海外渡航も「平成元禄」さながらの人気だが、むしろ注目はインバウンド(外国人の訪日旅行)だろう。2013年に1千万人を超え、昨年は2800万人に到達した▼折しも2度目の東京五輪が迫り、政府は20年に外国人4千万人、消費額8兆円を目標に「観光立国」を推進。施設整備の財源に「出国税」を創設した▼「国際観光旅客税」が正式名で、来年1月から出国する外国人と日本人から1千円ずつ徴収する。快適な旅行環境の整備などに使うというが、日本人に恩恵は少ない。観光ムードに水を差さないか不安がよぎる。

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