【論説】前市長辞職に伴うあわら市長選の投開票が4日行われ、前県観光協会専務理事の佐々木康男氏が初当選した。厳しい財政下で今後4年間の市政を担う。県職員を36年間務め、地方行政に精通している。JR芦原温泉駅周辺整備、人口減少問題、農業の活性化など多くの課題を解決するため、長年培ってきた経験と手腕を存分に発揮してほしい。

 選挙戦では各種団体や企業、地区の支援を取り付けるなど組織力を生かして優位に進めた。行政のスペシャリストとしての経歴を前面に押し出し国、県とのパイプを強くアピールした。

 5日の就任会見では「強い突破力で市の課題を解決する意気込みで戦った」と選挙を振り返った。円滑な市政運営のためにも実行してほしい。

 5年後に迫る北陸新幹線県内開業に向けたJR芦原温泉駅周辺整備計画は待ったなしの課題だ。市は昨年末、建設費や維持費など財政的懸念から、素案を大幅に見直した案を示した。市議からはさらに事業費の縮小を求める声も出た。今後は合併特例債があてにできない中で、財政調整基金も取り崩していかなければならないだろう。開業後は、並行在来線の負担金などの支出も加わる。

 公約では駅および周辺の機能の充実と着実な整備を掲げた。観光、市民の暮らしを含め、未来のための投資としなければならない。県の北の玄関口として、開業効果をあわら市のみならず県全体に波及させ、どう相乗効果を生むかの戦略も求められるだろう。

 国の人口動態統計によると、あわら市の2008〜12年の合計特殊出生率は県内9市の中で一番低く、県の調査では65歳以上が占める割合は3番目に高い。本紙世論調査でも新市長に望む施策として、高齢化・福祉対策と子育て・教育が上位に挙がった。5歳児保育料の無償化を県内自治体で初めて導入するなど手厚い子育て支援をしていながら、なぜ出生率が上がらないのか。有効な手段を一刻も早く打ち出す必要がある。

 市内で一番広いのが農村地域。担い手不足や高齢化が進む中で、コミュニティーの維持も大きな課題だ。

 今秋には福井国体・障害者スポーツ大会が控える。前市長の突然の辞職による市政の混乱の立て直しは急務だ。県職員として経験を積んだ佐々木氏には市民の期待も大きいだろう。一方で、行政経験が豊富だからこそ組織の論理や慣習にとらわれすぎないでほしい。住民の日常生活とつながる回路があって初めて、行政と市民意識との差を感じることができる。

 選挙戦では、合併から14年を経てなお、旧芦原、旧金津町に対する市民の思い入れの深さも浮き彫りになった。「皆さんの声をしっかり聞きたい」。選挙期間中にたびたび語ったその言葉を、しっかりと実行してもらいたい。
 

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