「部活問題対策プロジェクト」のホームページに目を通す吉野慶太教諭(仮名)=1月

 あるとき、1人の保護者が学校に乗り込んできた。吉野教諭が作成した練習計画表を手に「練習が少ない」と校長に直談判した。吉野教諭は、部活は教育課程外の活動で、学習指導要領に「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と明記されていることや、平日の指導は実質的に手当がない教員の「ボランティア」で成り立っている点を説明し、今後は授業準備に時間を割きたいと伝えた。

 部活の活動日を少なくしたことで当初は「同僚や管理職に白い目で見られていた」というが、迷いも後悔もなかった。次第に数人の若手教員が理解を示し、他の部活動でも平日に休みを設けるようになった。吉野教諭は自身の専門教科の研究に時間を注ぎ、生徒たちの成績は向上したという。「部活の成績が教師の『実績』とされる風潮があるが、授業こそが本分」と信じている。

 吉野教諭は、同じ志を持つ全国の仲間と連絡を取り合い、15年末に「部活問題対策プロジェクト」を結成。中部や九州などの現職、元教員6人がSNSで部活問題について発信している。16年3月には、部活の顧問を引き受けるかどうかの「選択権」を教員に与えるよう求める約2万3500人分の署名を文部科学省に提出した。

 「休憩するという思考にならないほど疲弊している」「教師のみが部活動を行うのは限界」「『長く学校に残っていれば熱心な教師』。時代遅れとも言える教師像を変えないと、声高に叫ばれている業務適正化や働き方改革は図れない」。吉野教諭がブログやツイッターでつづる「叫び」は多くの共感を呼んでいる。

 スポーツ庁のガイドラインについて吉野教諭は「保護者の理解が求めやすくなる点ではありがたい」と歓迎する一方、「教員自身がどこまで『我がこと』として捉えるか」という思いもある。「職員室には『みんなが子どものためを思って部活をやっているんだから、自分だけ早く帰るのはずるい』といった空気がある。同調圧力に負けて、声を上げられない仲間もいる」。教員の働き方改革には、教師自身が意識を変えることが重要とし「教師一人一人が聖域を設けず何ができるかを考えるべきだ」と話している。

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