【越山若水】立春だというのに寒波が居座る今、昆虫の話を持ち出すのは少し気が引ける。何の虫かと言えば、リーリー、コロコロ、そう、秋にしきりに鳴くコオロギである▼その中に特異な行動を取る個体がいる。普段は草むらで生息し泳がないのに、池や川へと飛び込んでいく。溺死したコオロギからは細長い虫がはい出すという▼どうやら寄生しているハリガネムシが自殺を仕向けているらしい。自分たちの交尾や産卵のため宿主を“水中の墓場”へと誘導。新たな生育場所を見つけるらしい▼生物学者によれば、ハリガネムシはコオロギの神経化学物質と似た物質を生産し行動を支配。夜行性から光を好む走光性に変えるらしい(「心を操る寄生生物」K・マコーリフ著、インターシフト)▼まさに「マインドコントロール」。1980~90年代に凶行を引き起こしたオウム真理教を思い出す。ただ水に飛び込むと言えば、北朝鮮漁船の昨年来の遭難が思い浮かぶ▼昨年1年間に日本に漂着した漁船は過去5年で最多の約100件に及んだ。どれも粗末な木造船で、荒波に砕けた船体と共に多くの遺体が見つかった▼聞けば、慢性的な食料不足を解消するため金正恩(キムジョンウン)委員長の「冬季漁獲戦闘」の命を受け、遠く日本海大和堆(たい)まで出漁するという。国家維持のために漁民が犠牲になるの当たり前。まさに民心を操る独裁者である。

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