【越山若水】サラリーマンだけでなく、多くの人にとって税務署は敷居の高い役所だろう。「税務」の文字面も鋭く、近寄りがたい。書類も必要だし…と思うといかにも面倒だ▼実際は想像するほどでもなく、近ごろはパソコンで入力して申請できる。庁舎に出向けば丁寧に教えてもくれる。何より、ちゃんと納税するのは国民の義務―▼と書いてみたが、国税関係者には迷惑かもしれない。16日から確定申告が始まるのを前に、自分たちのトップが世論の反感を買っているのに気をもんでいるという▼佐川宣寿(のぶひさ)氏である。森友学園問題を巡る国会答弁で「適切な対応だった」と繰り返したあの姿は、記憶に新しい。なのに後になって発言を疑わせる音声データや文書が出てきた▼国税庁長官に就いたのは昨夏。それは、追及の防波堤になった「論功行賞」だとみるのは勘ぐりなのか、どうか。長官として一度も記者会見していないのも、逃げの一手と映る▼有名な「後藤田五訓」の一つに「省益を忘れ、国益を思え」とある。名官房長官といわれた後藤田正晴さんが30年以上前、部下の官僚に訓示し奮い立たせた言葉である▼いまにも通じると思うのだが、はたして佐川長官の頭には私益も省益もなかったかどうか。「納めろって言うなら納めますけどねえ…」。納税者にわだかまりを抱かせている現状は、国益をむしろ損なっている。

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