【論説】持続可能な都市づくりを進める鯖江市は、近年世界で注目を集めている「シェアリングエコノミー(共有型経済)」について、市内での普及を加速させようと具体策の検討を進めている。まちなかで活用可能な資産の共有を図ることで生まれる新しい経済市場を国内に広げる先導的な役割を果たしたいとの意向で、展開を注視したい。

 住宅やオフィスといった空間、自動車などは購入した個人や企業が占有するというのが一般的。ただ、用途がなくなったり構造的に使わない時間が多くなったりしたものについては、社会の多くの人が共有できるものとして開放したり、分配に回したりした方が社会全体に有益ではないか。

 そうした視点に立った仕組みづくりがこの10年余り、欧米を中心にさまざまな角度から構築されている。特に活発なのがネット空間だ。進化する情報通信技術を背景に、世界中の人をつなぎながら共有を仲介するサイトが次々と開発。旅行者などに住宅や車を仲介する事業はビジネスとして活発化している。2015年版情報通信白書によると、13年に1兆円台だった世界のシェアリング関連市場は25年に36兆円規模まで成長する見通し。この波を鯖江でも具現化したいという。

 背景として市の担当者は、不特定多数の人との共助を楽しもうとするライフスタイルの変化があるとみている。国内でもサイト開設などの動きが広がりつつある中、市は先行して幾つかの取り組みを進めてきた。オークションサイトを立ち上げて市民の不用品を取引したり、クラウドファンディングによって寄付の流れを産業振興などにつなげたりする仲介事業の展開。

 物やお金の分配を促して新しい価値を生み出すこれらの取り組みが評価され、同市は昨年11月、東京の一般社団法人からシェアリングエコノミーを先導的に進める15自治体に選ばれた。これを機に普及を本格化させようと議会を交えて議論を展開している。

 現在、方向の一つとして焦点を当てているのが観光。市と協定を結んでいる東京のネット関連企業や大学が、空き家を活用した民泊や、工房の空き時間を生かしたものづくり体験などを進められないか検討を進めている。法規制など課題を洗い出しつつ連携や後押しを模索したいという。

 まちなかには物や空間以外にも人材、サービスに至るまで遊休資産がいろいろあるはず。それらにアイデアと共有の行動が投入されることでビジネス価値のある資源へと再生される。そうした取り組みが市民に広がった時こそ、環境と経済が両立した新しい都市機能が芽生えるはずだ。期待とともに進展を見守りたい。
 

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