【論説】群馬、長野県境にある草津白根山が突然噴火。麓の草津国際スキー場で訓練中の陸上自衛隊員やスキー客ーら12人が死傷した。気象庁などは噴火の前兆をつかめず、死者・不明63人の犠牲者を出した2014年の御嶽山噴火の教訓も生かされなかった。あらためて噴火予知の限界や監視態勢の不備、対策の遅れが問われる。再点検すべきだ。

 日本には富士山や白山など111の活火山がある。草津温泉に程近い草津白根山は名物・湯釜のある白根山と本白根山(もとしらねさん)、逢ノ峰の総称で、常時観測の対象50火山に入っている。

 噴火は白根山から約2キロ離れた本白根山で起きた。監視対象ではあったが、気象庁が噴火の可能性が高いと判断していたのは、何度も火山性地震が確認された白根山の山頂火口付近だ。監視カメラも3台のうち2台は白根山付近、1台は逢ノ峰に設置。いかにノーマークだったかが分かる。

 今回の噴火は水蒸気噴火との見方が強い。マグマの上昇に伴う地殻変動といった前兆が表れにくい。しかし、御嶽山も同じ現象だった。再び犠牲者を出したことを直視すべきである。

 課題は幾つもある。

 気象庁は活火山111のうち38火山40カ所に「噴火警戒レベル」を設定している。草津白根山では昨年6月に2から1に引き下げたが、政府の中央防災会議は御嶽山噴火を基にレベル1の説明を「平常」から「活火山であることに留意」と変更した。つまり潜在的危険性への注意喚起だ。

 本白根山の噴火は、直近の噴火でも3千年前とされるだけに、楽観視していた可能性はないか。近年の研究では約5000〜15000年前の間、比較的大きな噴火が6回起きたことが判明。観測の強化を求める意見も出ていたのだ。

 また噴火の確認も後手に回り、気象庁がレベル3に引き上げるのに現地通報から2時間近く要した。登山者らに危険を知らせる「噴火速報」も出せず、専門家からは厳しい指摘が出ている。外部観測者頼みの連絡体制も問われよう。

 もし、大規模なマグマ噴火が起きれば「融雪型火山泥流」が発生する恐れもある。1926年には北海道・十勝岳で144人の死者・不明者が出た。観測、通報網の整備とハザードマップの見直しが必要だ。

 御嶽山を教訓に政府は15年、改正活動火山対策特別措置法(活火山法)を施行。49活火山の周辺自治体や観光施設に避難計画策定を義務付けたが、3分の2が未整備だ。専門知識が不足する中で国の指導力や予算不足が問題ではないか。

 地震研究に比べ研究者の数の少なさも指摘される。政府資料(14年)によると火山研究者は全国で約80人、うち大学に属する研究者は47人にすぎない。予算も地震研究の2割程度だ。

 人命の貴さを考えれば、災害列島に「不意打ち」「想定外」は通用しない。経験則に頼ることなく常に想定外を想定し、災害リスクに立ち向かわなければ、日常の安寧は得られない。
 

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