【越山若水】時空を超えた植物の生命力を証明したのは「縄文ハス」である。地中深く数千年も眠っていた古代の種子が咲かせたピンクの花は、まさに神秘的と言うしかない▼京都の世界遺産、平等院鳳凰堂の発掘調査では、池の泥からツバキの種が見つかった。「室町椿(つばき)」として育てられ、600年余りの時間を経て見事に花開いた▼漢字を見ての通り、ツバキは春を呼ぶ花である。ただ開花時期は初冬から晩春まで長期間に及び、歳時記に「寒椿」「冬椿」があるように寒い冬に咲くこともある▼ヤブツバキの学名「カメリア・ジャポニカ」から分かるように、もともと日本に自生する樹木。しかし花ごとポトリと落下するため、俗説では「首が落ちるので縁起が悪い」と武士に嫌われたという▼植物学者の稲垣栄洋(ひでひろ)さんによれば、ツバキは神前に供えるサカキと同じく神聖な常緑樹で、江戸時代になるとむしろ「潔し」と愛好され、武家屋敷に多く植えられたらしい▼まして雪の中に咲く一、二輪の真っ赤な花は何とも鮮やかで、寒気に負けない生命力は見る人の心に訴えかける。「耐冬花(たいとうか)」の別名がピッタリである▼今まさに寒の内、超一級の寒波が襲来している。受験生には辛抱の時で、それこそ「耐冬花」の心境だろう。来月4日は寒明けの立春。それまでもうひと頑張りだ。「生きることは一と筋がよし寒椿 五所平之助」
 

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