【論説】「いずれにしても○○という批判は当たらない」は、衆参両院の代表質問に対する安倍晋三首相の答弁で何度となく使われる言い回しだ。自身に都合のいいデータや政策の趣旨を並べ立てるなどし、揚げ句に野党が指摘する懸念を真っ向否定する。

 野党側の質問にももっと工夫が必要だが、ただしたいのが「憲法改正」「働き方改革」「原発」「待機児童」などに集約されるのは仕方がない。問題はそれに対する首相の答弁が紋切り型に終始していることだ。要は繰り返しなのだ。

 代表的なのが改憲批判に対して度々口にする「『自衛隊員に憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれ』というのはあまりにも無責任」との答弁。隊員がかわいそうだと情に訴えるフレーズだ。

 首相は9条2項を残した上で、自衛隊の存在を明記しても「任務や権限に変更が生じることはない」と予防線を張る。だが、明記することで「どんどん命を張っていただく」とならないか、懸念はそこにある。

 代表質問では、野党の問いをスルーする場面もあった。待機児童解消に関して、民進党の大塚耕平代表が受け皿を32万人分とする現行計画が不十分ではないかと迫ったのに対して、首相は推計方法を説明しただけ。前日にも希望の党の玉木雄一郎代表が89万人分が必要との民間試算を引き合いに追及したが、首相はまともに答えなかった。

 財政健全化に関しても、無所属の会の岡田克也代表が、来年10月の消費税増税増収分全てを借金の返済に回しても「目標は達成できない。アベノミクスの失敗だ」とただしたのに対して、首相からは総括するような答弁はなかった。

 新たな交渉記録が明るみに出た森友学園問題では、立憲民主党の枝野幸男代表が、理財局長として国会で「廃棄した」と突っぱねてきた現・国税庁長官の佐川宣寿氏の更迭を迫った。これに対して首相はゼロ回答。事態を軽視していると言わざるを得ない。

 代表質問では一問一答の委員会のように突っ込んだ議論にならないのは確かだが、安倍首相の答弁は過去の演説や発言の繰り返し、すり替え、肩すかしに終始し、誠実さや真摯(しんし)さあるとは到底言えない。

 予算委員会でも同様の答弁が繰り返されるといった傾向は年々、強まっている。野党に攻撃材料を与えない「安全運転」が目に余る。首相の答弁は果たして血の通ったものなのだろうかと言いたくなる。

 与党は、昨秋の臨時国会に続き、通常国会でも予算委員会などでの野党の質問時間削減を要求している。与党議員の質問はこれまでもアピールに傾きがちで、野党から「よいしょ」と揶揄(やゆ)される。政策を練り上げる上では疑問符が付く。

 予算委員会では野党の突っ込んだ質問、追及は無論、安倍首相が正面から向き合う必要がある。国会審議の形骸化は安倍政権への「飽き」につながることも肝に銘じるべきだ。

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