【越山若水】「ポリティカル・コレクトネス」は1980年代に米国で広まった用語。「政治的正当性」と翻訳されるが、要するに人種や性別、宗教などによる差別表現をなくそうとする運動である▼例えば「黒人」を「アフリカン・アメリカン」、「ビジネスマン」を「ビジネスパーソン」に言い換えた。日本でも「看護師」「保育士」などが登場した▼ただ行き過ぎると言論の自由を損なうとの意見もあった。英国教育界では「失敗」の代わりに「成功の先延ばし」を使うべき―と提案されたが、議論の末に却下された▼さて「ポリティカル・コレクトネス」に厳格な米国で、事もあろうに大統領自らが、アフリカやカリブ海諸国を「shithole=シットホール」と呼ぶ侮辱的な発言をした▼世界のメディアが翻訳に困ったほど下品な言葉だ。「くそったれ国家」「屋外便所のような国」「ごみの穴」など苦肉の訳語を用いて、トランプ氏の暴言を一斉に批判した▼当然ながら名指しされた国々も大反発。「撤回と謝罪」を求める声明を発表した。本人は発言を認めていないが、これまでも失言放言は数え切れない▼トランプ大統領の就任から1年。「米国第一」の掛け声の下、偏見に満ちた政策が目に付く。一方で自身の報道には「フェイクニュース」と決めつけメディアを攻撃する。「政治的正当性」の欠落が嘆かわしい。

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