【論説】「今日からはひたすら『米国第一』だ。われわれの雇用を、国境を、富を、そして夢を取り戻す。米国は再び繁栄し成功するのだ」

 トランプ米大統領が就任して1年を迎えた。下層中産階級の支持を得るべく高らかに宣言した演説は国内の分断と対立、排除の論理を増長させ、政治・経済の排外主義的手法は国際社会を混乱に陥れている。

 国際協調に背を向けるリーダーの過激な姿勢は、世界の信頼を失い孤立を深める国の象徴である。

 1周年を前に、トランプ氏は「フェイク(偽)ニュース大賞」を発表。主要メディアを標的に「最も腐敗し、偏向した」と露骨にたたいた。親和性のある一部のメディアしか信用せず、政権に批判的な記事を「フェイク」と攻撃している。

 だが、自身のツイッターで繰り出す「トゥルース(真実)ニュース」こそ虚偽に満ちていると批判を浴びる日々である。

 平均支持率は40%を切りこの時期としては近年の大統領で最低だ。当然でもあるが、民主党支持者層が1割台に対し、共和党支持者が8割超といういびつな世論形成こそ異常で、国内を一層不安定化させている。

 とりわけ白人至上主義や極右思想を掲げる過激グループ「オルト・ライト」と暴力的な「アンティファ(反ファシズム)」の衝突は深刻だ。南部では多くの死傷者が出ており、これも「負のトランプ現象」ではないだろうか。

 内憂外患は拡大するばかりだ。内政では法人税率の大幅引き下げを柱とする税制改革を形にした。公約の実現だが、財政や経済の長期展望に立ったものではなく「減税」というイメージ優先の色合いが強い。

 次なる目標は官民合わせ総額1兆ドル超の巨費を投じるインフラ整備だ。不法移民対策にメキシコ国境の壁建設にも執念を燃やす。いずれも国民の歓心を買い、秋の中間選挙で与党共和党の勝利を得る手段である。

 しかし、あらゆる政策に得意の「ディール(取引)」を駆使するトランプ流に世界は冷ややかだ。

 核・ミサイルの脅威が増す対北朝鮮政策は一貫せず愚かな言葉の応酬を繰り返すばかり。背後の中国に対しては北への制裁強化と通商政策の抱き合わせだ。

 地球温暖化対策のパリ協定離脱表明や環太平洋連携協定(TPP)離脱、カナダ、メキシコ間の北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、さらにエルサレムをイスラエルの首都として一方的に認定するなど世界の秩序破壊に走る我欲の一国主義が止まらない。

 世界の反発を招こうと、国内で歓迎されるという打算が働いているとすれば、超大国を自壊させる危険なポピュリズムである。

 政府高官ポストも空席が目立ち、閣僚らの更迭、辞任が相次ぐ中で孤立感が深まる。追い打ちを掛けるのが選挙期間中の対抗馬に対するロシアゲート疑惑だ。大統領弾劾審議への扉が開く可能性さえはらむ。

 日米同盟を基軸にトランプ政権に追従する安倍政権は蜜月ぶりを演出するが、大局的にみれば国際協調から外れ「ディールの罠(わな)」にはまっている。国家の毅然(きぜん)たる姿勢が問われよう。

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