ゆるパブリックの理事の一人で慶応大特任准教授の若新雄純です。僕は福井県若狭町の鳥羽という山村地域で育ちました。駅前に集落のおばちゃんがやっている小さな食料品の個人商店がありました。店に入っても、レジの奥の部屋に向かって大声で呼ばないとおばちゃんは店には出てきません。客が呼ぶまで、テレビを見てゴロゴロしてるんです。それでも、賞味期限の近いお菓子を安くしてくれたり、消費税が3%の時代はそれを加算しなかったりで、子どもたちから人気でした。

価格と質のグラフを考えてみた

そこには、世の中の常識に関係なく、お店とお客の間に「個別の納得」が生まれていました。だから、おばちゃんは奥でテレビを見ていてもいいんです。合意が成り立っていれば、その「ゆるいサービスに」に誰もケチをつけることはできません。

あのお店はとても儲かっているようには見えませんでしたが、おばちゃんがきついブラック労働をしていたとも思いません。むしろ、ゆとりをもって自由に働いていました。そして少なくとも僕たちにとっては、大好きな場所でした。

僕は先日、ニュース番組で「ブラック企業」についていろいろとコメントしました。その内容をまとめたネットニュースに、いろいろ反響があったようです。僕の主張をあえて一言にまとめると「ブラック企業を生み出しているのは消費者だ」ということです。

僕は、「◯◯はブラック企業だ」というニュースを見るたびに、自分がその企業やサービスのヘビーユーザーだということに気づかされます。だって、すごくいいものをかなり安く売っているんですもん。いいものを安くすれば、どこかにしわ寄せが行きます。僕たちが安くていいものを買えば買うほど、その裏で働く人に低賃金や過剰労働の問題が生じているわけです。

例えば、激安でまぁまぁ美味しいチェーンの飲食店で、テーブルにコップの跡などが残っていると、自分で拭けばいいのに店員を呼んでしまいます。安く美味しいものを食べられるのは人件費を削ってスタッフがぎりぎりで働いているからなのに、僕らはそういう細かいところのサービスまであたりまえに求めています。

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