【論説】行政機関の文書管理を巡り、政府が見直しを進めてきたガイドライン(指針)が、有識者でつくる公文書管理委員会で了承された。見直しは森友、加計学園や南スーダン国連平和維持活動(PKO)日報問題で「記録にない」「廃棄した」といった答弁が批判を浴びたためだ。一定の前進は図られたが、担当部署の判断に委ねられるという構図は変わらず、恣意(しい)的な運用への懸念は拭えない。

 森友学園の国有地値引きでは、野党の追及に財務省が学園側との交渉記録を「廃棄した」と説明を拒否。PKOの現地部隊が作成した日報については、情報公開請求を受けた陸上自衛隊が「廃棄済み」とし、開示しなかった。ともに「保存期間が1年未満の文書」を理由にしたものだった。

 新指針は「意思決定過程などの合理的な跡付けや検証に必要となる行政文書は、原則として1年以上の保存期間を設定」と明記し、「1年未満」として「定型的・日常的な業務連絡、日程表等」など7類型を提示。さらには「1年未満の文書でも、重要または異例な事項に関する情報を含む場合、1年以上の保存期間を設定」するよう、くぎを刺した点は評価できよう。

 ただ、「1年未満」に何が該当するのかは、引き続き各省庁任せになる。文書は日々、膨大な量に及ぶとされ、煩雑な作業を避けるため、内々に廃棄してしまうようなことが想定される。01年の情報公開法施行前には文書が大量に廃棄された経緯がある。新指針は今春にも施行され、同じような事態が起きないか。

 新指針のもう一つの柱である省庁間などの打ち合わせ記録の作成では、「相手方の確認などにより正確性の確保を期する」とした。これは加計学園の獣医学部新設を巡り、文部科学省が内閣府から早期開学を迫られる中で「総理のご意向」などと記した文書が明らかになったことを受けての対応だろう。内閣府は「記録がない」の一辺倒でいまだに解明されていない。

 このケースで内閣、文科両府省ですり合わせが行われていたとすれば、「ご意向」といった文書は葬り去られていたはずだ。一方に都合の悪い事実が削除されたり、詳細は記されず結論のみが記録されたりする可能性も否定できない。

 新指針では、相手方に確認を取る前の文書に関し「『客観的な正確性の観点から利用に適さなくなった文書』に該当すると一律に解釈されるものではない」としたが、曖昧だ。文書管理者(課長級)が確認したものだけが残り、保存範囲が狭められる恐れもある。

 個人の電子メールについては「総合的に考慮して実質的に判断する必要がある」と公文書化には消極的だ。そんな中、各省庁で使う電子メールの大半が公文書として扱われていない実態が報道された。中には国会議員との政策に関するやりとりもある。「意思決定過程」に関わったものが「私的メール」として消去される事態は深刻と言わざるを得ない。

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