【論説】日本の未来を語るとき、忘れてならないのは高齢化問題だろう。高齢化率は世界一高く、国連の定義では最高レベルの「超高齢社会」に分類。65歳以上の人口は3346万人で26・6%(2015年国勢調査)、4人に1人という現状である。

 また団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」も控えている。高齢化率は30%に達し、認知症患者も462万人から730万人に急増すると推測される。

 そんな中で福井県が独自に掲げる目標が「元気生活率」の向上。介護の世話にならず元気に生活できる高齢者を増やすことに取り組んでいる。

 ■ガリバー旅行記が予測■

 実は人間が望んできた長寿には矛盾が内在し、いずれ新たな問題に直面することは昔から指摘されていた。英国のスウィフトは1726年に刊行した人気小説「ガリバー旅行記」で見事に予見している。

 ガリバーは日本に立ち寄る直前、ラグナグ王国という島国を訪れた。そこでは時々、額に斑紋を持った子どもが生まれる。不死人間の印だという。ガリバーは死の恐怖を免れた彼らが、最高に幸せな人生を送るだろうと想像しうらやましく思った。

 ところが現実は悲惨だった。身体には老醜がにじみ、身寄りも知り合いも既に亡くなり、話し相手がいない。世代が違う人とは話題がかみ合わない。単に長生きするより若さや元気を保つことが大事―。ガリバーはそう気づかされた。

 まさに現代の課題を先取りしたストーリーである。

 ■健康寿命で自立支援■

 世界トップクラスの長生き国・日本も、13年度から始めた第2次「健康日本21」で「健康寿命」の延伸をうたう。同年の平均寿命は男性80・21歳、女性86・61歳。対して日常生活で自立して暮らせる健康寿命は男性71・19歳、女性74・21歳。それぞれ9年、12年も短くなる。

 この「不健康な期間」を短縮するため、厚生労働省はがん検診率アップから生活習慣病やメタボの減少、メンタルヘルス、認知機能の把握、社会参加の促進まで、さらに運動習慣や栄養・食生活、歯の健康など事細かな対応を進めている。

 もちろん国としては、健康寿命の延伸で医療費や介護費の抑制も視野に入れている。政府の「未来投資会議」では介護面の「自立支援」を大々的に打ち出し、新年度からは介護度を改善した事業所を表彰する制度を取り入れる。

 ■国体を機に運動推進■

 福井県が健康寿命の代わりに進める施策が「『元気生活率』日本一」だ。要介護認定率(要介護1以上)を裏返しにした独自の指標で、介護を必要としない高齢者の割合を指す。

 17年度の元気生活率は65〜75歳は97・70%で全国1位。75〜80歳は92・13%で4位。目標達成に向け、元気な人の疾病予防と要介護度の改善の視点から、福井国体記念のウオーキング大会、高齢者グループへのスポーツ出前講座などを実施する。

 もう一つの柱が昨年策定した「認知症予防プログラム」の普及推進である。17年度の認知症高齢者は2万8千人余で全体の12・5%、要介護者の68・6%を占める。これを予防するためのパンフレット2万部を作成、国体ダンスを生かした体操や認知症予防の食レシピ、歯の健康などのPRに努める。

 「元気生活率」はその名前が示すように、対象が医療・介護に限らずスポーツや社会教育まで非常に幅広い。独自施策が実を結ぶカギは行政と関係機関の連携はもちろん、高齢者が住む各地域への浸透が何よりも重要である。

関連記事
あわせて読みたい