【越山若水】大相撲が現在の年6場所制に増えたのは1958(昭和33)年のこと。以来、東京で開かれる1月場所を「初場所」、3月の大阪開催を「春場所」と呼んでいる▼「初場所や匂ふばかりの若力士 仁田脇吉応(にたわきよしお)」。年が改まった新鮮味もあって、初場所は年若い戦力の躍動が目を引き、新旧の入れ替わりが見どころとされた▼新名称になって60年、初場所があす始まる。21歳の若き三役、阿武咲と貴景勝のライバル対決は注目の的。休場明けの2横綱、鶴竜と稀勢の里の復活も気に掛かる▼ただ今場所はもっと大きな課題を抱える。昨年起きた元横綱日馬富士の暴行事件である。相撲協会の対応は鈍く真相解明にも後ろ向き。内部処理で済まそうとする姿勢は公益法人の自覚を欠いている▼被害者側の貴乃花親方の行動も不可解だ。相撲界の古い体質を変えたいとの気持ちは理解しても、調査協力をひたすら拒否し降格されたことはファンとしても割り切れない▼江戸時代、相撲は歌舞伎と並ぶ人気を博したが、けんかが絶えず何度も禁止令を出された。明治維新にはパトロンの藩主が没落し存続の危機を迎えた▼それを救ったのは人気力士の活躍だった。江戸中期の谷風と小野川。明治後期の梅ケ谷と常陸山。戦後の栃錦と若乃花…。土俵の上の真剣勝負が何よりの特効薬である。「初場所や崩れし髷(まげ)の勝名乗り 中島花亭」

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