【論説】本格的な入試シーズンを前に、大阪大の入試ミス問題がクローズアップされている。大学側の謝罪の弁に「受験生の将来に極めて大きな影響を及ぼした」とある。入試の重要性は何より大学が肝に銘じながら実施しているはずだ。謝罪して済む話ではない。阪大は無論、全ての機関で組織体制を総点検するべきだ。

 ミスは昨年2月に実施した一般入試の物理科目で発生した。正答が複数あるのに解答を一つに限定。これを前提にした次の問題も不適切なものとなり、本来合格するはずの受験生30人が不合格となった。

 なぜ、あってはならないことが起きたのか。

 入試から4カ月後の昨年6月、高校教員らが参加する入試問題検討会でミスの可能性が指摘された。8月には予備校講師からも同様の指摘がメールで届いた。

 阪大は最初、問題作成責任者の教授と副責任者の2人だけで検討したが、ミスを認めなかった。12月に外部から詳細な論証メールが届くに至って別の教員4人も加わり、ようやくミスに気付いたと説明する。

 ミスを指摘した予備校講師はその後再びメールを送ったが何ら反応はなく、9月には文部科学省にも対応を求めたという。

 「思い込みがあった」と弁解するが、再三の指摘でもミスに気づかなかったとすれば出題する資格はない。というより、外部の指摘を軽視した上にミスを認めたくない意思が働いたのではないか。問題作成者だけで検討し、組織で情報を共有しない過度の密室性も問われよう。「過信」「慢心」という言葉では済まされない深刻な状況だ。

 不合格になった30人は他大学に在学したり、予備校に通ったりし、9人は第2志望の学科に入学した。大学は30人全員を追加合格させ、今春の入学や他大学から2年生への転入などの措置を講じるが、学生の気持ちは複雑だろう。

 予備校費用の補償も進めるというものの、貴重な1年を失わせた責任は重い。本来不合格だったのに合格となった受験生も同数程度いた。「学生に責任はなく、本人に一切通知しない」というが、学生の間で疑心暗鬼が生じないか。

 再発防止には、まず事実関係を詳細に究明し、明示すること。さらに外部からの指摘を検証するシステムをどう確立するかだ。

 大学入試で合否に関わる重大ミスが多発している。2009年度には追加合格を出した大学が21校、04〜10年にかけては3私大で各100人にも及んだ。

 01年には山形大工学部で国語の配点ミスがあり、調査の結果5年間で計428人が誤って不合格に。発端は成績開示を求めた受験生の指摘からだった。同年、富山大人文学部では、過去に合否判定プログラムのミスで計16人が不合格となり、大学側が2年間も隠蔽(いんぺい)していたことが発覚した。

 若者の人生を左右しかねない関門、それが最高学府の入試だ。これ以上の大学劣化も、入試への不信感が広がることも許されない。

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