【論説】南北閣僚級会談が開かれ、北朝鮮が韓国の平昌(ピョンチャン)冬季五輪に参加することなどで合意した。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は年頭会見で「五輪を南北関係改善と朝鮮半島の平和の転機としなければならない」と成果を強調した。だが、肝心の非核化に関して北朝鮮はゼロ回答どころか、核開発を正当化する発言もあったという。

 今回の会談では北朝鮮が交換条件を出さなかったとされるが、今後、制裁緩和といった譲歩を求めてくる可能性もある。韓国は北朝鮮ペースに翻弄(ほんろう)されることなく、核放棄へと導くしたたかな戦略が求められる。情報を共有し日米韓連携を密にすべきだ。

 文政権は平昌五輪の成功に向けて北朝鮮の参加は欠かせないとするスタンスだが、目先の成果のみを追求する危うさも否めない。北朝鮮の代表は「核兵器は米国を狙ったもので、北と南に関係のない問題を持ち込むのはよくない」と核問題の議論を棚上げした。これでは何のための対話か。

 北朝鮮は五輪参加で韓国に「貸し」をつくり、さまざまな要求を突き付けてくることが予想される。「同胞」意識を前面に抱き込むことで、米韓合同軍事演習の中止や南北経済協力事業の再開などを求めてくるのではないか。そこには巧妙な揺さぶりで包囲網の分断を図る狙いがある。

 文氏は「北朝鮮の非核化は譲歩しない」と述べたが、どの段階で強く打ち出すのか。「ある程度の成果が担保されるなど条件が整えば、いつでも南北首脳会談に応じる用意がある」とした。だが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は「新年の辞」で核兵器の実戦配備を指示するなど、核放棄へ動くことはありえないだろう。

 それどころか、韓国を仲介役に、米国との交渉をもくろんでいるはずだ。「核保有国」として認めさせ、体制維持を図る狙いが透ける。大陸間弾道ミサイル(ICBM)は核弾頭の大気圏再突入技術が未完成とされ、南北対話が開発への時間、資金稼ぎにつながる恐れも否定できない。

 北朝鮮には、対話で示した合意を再三、翻意してきた過去がある。米国や日本には今回も用意周到に進めてくるとの警戒感は強い。米国は五輪・パラリンピック後に合同演習を実施し「最大限の圧力」を強める方針だ。韓国は五輪成功を終着点とせず、その後を見据え、日米との政策調整を図るべきだ。

 文政権は従軍慰安婦問題を巡る日韓合意では、再交渉はしないとしたものの、事実上変更し先送りする方針を発表した。政府間の合意は政権が代わっても重みは変わらない。合意の見直しを公約に掲げた以上、何らかの対応を示す必要があったのだろうが、10億円の拠出金の位置付け変更は場当たり感が拭えない。

 日本政府が合意の履行を求めていくのは当然だろう。だが、北朝鮮という脅威を眼前にしながら、日韓が溝を深めていては北を利するばかりだ。両政府には連携を再構築するような方策を求めたい。
 

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