【越山若水】中国・北宋の詩人、蘇軾(そしょく)は政治家としても卓越した力量を発揮した。それがアダとなって厳しい処罰を受けたり、辺地に左遷されたり、何度も憂き目を見ている▼それでも彼はいつも力強く生き抜いた。その気丈な精神を支えたのが、何でも肯定的に受け止める人生観だという(川合康三著「生と死のことば」岩波新書)▼代表作の「赤壁の賦」は有名な古戦場を舞台に、友人と船遊びをした様子を歌に詠んだもの。友は自分の一生の短さを悲しみ、果てしなく流れる長江をうらやんだ▼これに答えて蘇軾は、水と月を例に挙げこう返した。水は流れ去るけれど、無くなることはなく次から次へと流れてくる。満ちては欠ける月もまた、忽然(こつぜん)と消え去ることはない▼変化という視点で見ると、長江も月も人間も常に変わりゆく。しかし不変の観点からは、いずれも今なお存在し続ける。造物主が惜しみなく披露する美しい景色を、さあ楽しもう―と蘇軾は歌う▼「人の生は仮の宿り」。人生のはかなさを意味するこの言葉は、中国の古詩文に繰り返し登場する。日本でも鴨長明の「方丈記」で見ることができる▼歴史を振り返れば、名だたる先哲もみな生きることに悩んでいた。だから庶民が思い悩むのは当然のこと。きょうから2018年が実質的に始動する。苦しいときも蘇軾に倣い、前向きの人生観を指針にしたい。

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