大手ネットオークションサイトに出品された福井県にまつわる古文書の一部

 福井県史は1978~98年に編さんされた。その際に調査された史料群は1982件に上り、その9割以上はマイクロフィルムに撮影された上で所蔵者宅や寺院、公民館などで現地保存されている。

 県文書館は本年度から市町教委と連携して所蔵者にアンケートを送り、保存状況などを尋ねる調査に着手した。敦賀市の史料群214件について調べたところ、回答した所蔵者の5%が「残っていない」、31%が「残っているか分からない」とした。県と敦賀市では、さらに電話や訪問で所在確認を進めている。

 西村准教授によると、先行して県史編さん史料の調査を行った三重、大分、新潟県では史料の2~3割が不明になっていた。▽所蔵者の代替わり▽引っ越し▽大掃除▽災害―で紛失、廃棄してしまうケースが多いが、所蔵者から買い取った古美術商や古書店がネットオークションに出品する事例もあった。

 福井市内の古美術商は「知識や人脈のある地元業者は史料をばらばらにするような売り方はしないが、歴史的な価値が分からない一部の業者が県外で転売し、巡り巡ってネットで切り売りされる場合もあるようだ」と明かす。

 ただ、背景には県内市場の変化もあると指摘する。「近年は財政難で行政の文化財購入に充てる予算が減った上に、地元の収集家も減った。業者としては少しでも高く買ってもらえる手段を選ぶのは自然」と話す。

 県内文化施設の史料の収容能力にも課題がある。県史の史料調査が進むにつれて寄贈や寄託の申し出が増えることが予想されるが、県や市町の書庫に余裕は少ない。2003年開館の県文書館の書庫はすでに8割が埋まっていて、23年には満杯になる見通し。県文書館の担当者は「すべての申し出には応えられない」と苦しい胸の内を明かす。

 平成が終わりを迎えようとしている中、昭和時代の文書も歴史的に価値のあるものになりつつある。郷土の歴史を語る貴重な史料が、ネットの波に消えないようにするための対策が求められている。

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