【越山若水】干支の戌にちなんで故吉野弘さんの詩「犬とサラリーマン」を紹介したいのだが、小欄には収まりきらない。抜粋になるのをお許し願いたい▼「また来た。/ビスケットを投げたがやっぱり食わない。黙って僕を見つめている」。やせた黒い犬で鑑札もなく愛想もない。そのくせ毎日のように台所へ顔を出す▼「僕」はそれまでの「ほどこし」が思い上がりだったと悔やみ、その夜は黙って一緒に居た。何も与えず欲しがらず。「星が美しく犬の眼がやさしかった」▼この謎めいた犬は、かつて人に飼われていた。「僕」はサラリーマン。他に依存するという点で同じ身の上だった。そして最終連。「そんな淋しい夢を抱え僕は翌朝いつもの道を出勤した。」▼そう、夢だった。犬は自立を果たしたものの象徴だろうか。それに内心憧れる「僕」はといえば相変わらず。2018年の仕事始めを済ませ、身につまされる人もいるだろうか▼相場の格言に「戌笑う」とある通り、と言おうか。4日の東証大発会は終値で26年ぶりの高値を付けた。幸先よしと喜びたいけれど、油断は禁物▼「今年は世界、日本の産業・社会構造が一変する大きな変革の始まり」。県内経済界や各社のトップ語録にも、先行きへの危機感がにじんだ。この変革は、たぶん「鑑札」付きの従順な犬では乗り切れない。自立した社員でありたい。
 

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