【論説】武家政権が終わり、新しい国づくりに向かう明治維新が成ってから150年という節目の年を迎えた。日本の歴史が大きく動いたこの時代に今、スポットが当たっている。混沌(こんとん)とした社会の中できら星のごとく秀でた人材が現れ、“日本の夜明け”の礎を築くとともに各地の志士や政局に大きな影響を与えた福井への注目が高まっている。

 坂本龍馬が暗殺される5日前、財政手腕に優れた福井藩士、由利公正(三岡八郎)の「新国家」への出仕を求めて同藩の重臣に宛てたとされる新発見の手紙は、龍馬がいかに福井を頼りにしていたかを示すもの。福井市などで公開されたことは記憶に新しい。

 雄藩と連携し、倒幕でも佐幕でもない中庸な立場で新時代を切り開こうとした藩主、松平春嶽についての評価も著しい。テレビドラマ化され、直木賞作家、故葉室麟さんの最新作「天翔(あまか)ける」では、維新を実現させた最重要人物として春嶽の生き方に迫っている。

 そのほか、橋本左内と西郷隆盛の関係など特筆すべきことは多い。福井との関わりが深い歴史家で作家の加来耕三さんは「幕末から明治に至る歴史には、どこを切っても福井の人物がでてくる」と、福井藩の躍動ぶりをたたえる。

 強い信念の下で大胆に社会を揺り動かす一方、平和的に物事の解決を図ろうとした「縁の下の力持ち」の存在の福井と福井の人々の姿は、同じく転換期にある現代の人々の指針になる―。薩長のように歴史の表舞台にはなかった福井へのスポットライトは、われわれの行く道を照らすものの一つと言えそうだ。

 ただ、「この素晴らしい歴史を福井の人たちはあまり知らない」と加来さんは指摘する。「歴史は学び生かさなければ意味がない」と訴え続けている歴史家の言葉だけに、福井人にとってはとても痛手で残念だ。

 そんな中、これらの歴史を顕彰し、人の交流や観光に生かそうとする活動が全国的に本格化している。大政奉還150周年を記念し昨秋、福井や鹿児島など22都市が参画して京都市で開かれた「幕末サミット」では「歴史に学び、地域でつながり、未来に活(い)かす」との共同宣言が採択された。

 政府は「明治以降の歩みを次世代に残すことや、幕末明治の精神に学び、日本の強みを再認識することが重要」として関連施策を推進。福井では県内約30の文化施設をパビリオンに見立てて展示や催しを展開する「幕末明治福井150年博」が今年3〜11月に開かれる。本紙では7日から、由利公正を軸に福井藩の活躍を描く大型連載小説が始まる。古里の歴史にあらためて理解を深める格好の機会が訪れている。
 

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