【越山若水】年の初めにふさわしく「希望」について考えてみたい。将来の展望が開ける前向きの言葉である。ところがいつも閉塞(へいそく)感や不安の裏返しとして語られることが多い▼例えば日本の場合、バブル経済がはじけて長期不況真っ最中の1998年、作家の村上龍さんは小説「希望の国のエクソダス」の連載を「文藝春秋」で始めた▼主人公の少年はその中で語った。「この国には何でもある。本当にいろいろなものがある。だが、希望だけがない」と。その当時は格差や貧困が大きな課題だった▼希望とは何だろう。「大人のための社会学」(井手英策ら著、有斐閣)によると、第2次大戦前にドイツから米国に亡命したユダヤ人哲学者は、希望という概念を「まだ―ない」ものと捉えたという▼苦難の生活を過ごした彼は「もはや―ない」過去でなく「まだ―ない」希望に着目。世の中には未来を実現する社会的な力が隠されている。その力を信じるように提言した▼難解な考察はさておき、将来の変革を生み出す力こそ「希望」というわけだ。それが憂慮すべき現状を打ち破り、人々の行く手を照らす明かりとなる▼世界中に対立の嵐が吹き荒れ、気候変動で災害の不安が高まる。日本の景気回復も実感が乏しい。2018年は良い年にと願うばかり。ただその前に「まだ―ない」新しい目標を見つけ、挑戦する覚悟が肝心だ。

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