華道家元池坊の佐々木憲乗支部長(左から2人目)の手ほどきを受ける安田喬さん(左)=福井市の自宅

 脳性まひで手足に障害のある福井市の男性が華道に打ち込み、他人に教えられる免状(資格)を取得、自宅で生け花を教えている。弟子には同じ脳性まひの男性もおり、華道の楽しみを周りの人に伝えていくとともに、障害年金などに頼らない経済的自立を目指して稽古と指導に励んでいる。

 この男性は同市の安田喬さん(40)。幼いころから脳性まひによる障害があり、車いすで生活している。約20年前に実家のある福井県敦賀市内で生け花の作品展を訪れた際、女性指導者に誘われて入門。先生の立ち居振る舞いや言葉遣いにも引かれ、華道にのめり込んでいった。

 家庭の事情でいったん華道を離れたが、福井での1人暮らしを機に2012年に再開した。障害のハンディを埋めようと、華道家元池坊福井支部長の佐々木憲乗さん(71)の出張個人指導を月に2~4回受けるようになった。

 「泣きたくなるほど難しいが自分に負けたくない」。厳しい教えに挫折しそうになりながらも、佐々木さんも太鼓判を押す「真面目さと向上心」でめきめきと上達。人に教えられる「脇教授3級」の免状を昨年7月に取得した。インターネットで知識を仕入れるだけでなく、握力の弱い左手をゴムボールで鍛えるなど努力が支えになった。

 現在の3人の弟子のうち、同じ脳性まひの広瀬久幸さん(59)は、「安田さんに教えてもらえるなら」と華道を始めたという。「教えること自体が自分の勉強になる」と熱っぽく語る安田さんは、教室が持てるさらに上の免状「正教授」取得を目標とする。「将来は弟子を増やし、華道の先生として自立したい」。社会保障に頼らない生活を目指している。

 佐々木さんは「安田さんの頑張りは、障害者に対してだけでなく、社会全体の刺激になる」と話す。「花が好きだから」という安田さんに、佐々木さんは「これからも精進し、日本の伝統文化を支える一人に」と期待を寄せている。

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