【論説】人生が「禍福は糾(あざな)える縄の如し」ならば、人の世も「明」と「暗」を織りなしながら月日を重ねていく。2017年はどんな歴史を刻んだのだろうか。

 国内外で平和の秩序が崩れ、人々の不安感が増幅している。そんな中、若者が秘める無限のエネルギーに明るい未来を見いだした年でもあった。

 ■世界は排外主義増幅■

 これは「暗」の幕開けだったのだろうか。「米国第一」を掲げた米共和党のトランプ大統領が1月、第45代大統領に就任。環太平洋連携協定(TPP)やパリ協定、ユネスコからの離脱表明は保守主義を超えて我欲むき出しの秩序破壊だ。

 アジアの大国、中国の習近平(しゅうきんぺい)1強体制はさらに権力集中を強め、経済強国と海洋権益増強を狙う。米中のパワーゲームを見透かすように、北朝鮮の核・ミサイル開発が加速。11月には米本土射程の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し「核戦力完成」を宣言した。有事リスクが拡大する情勢だ。

 欧州も「暗」を醸す。メイ英首相が3月、欧州連合(EU)離脱を正式通知。内向きな保守主義は独仏の大統領選、議会選挙でも顔をのぞかせる。中東情勢はトランプ大統領のエルサレム首都認定で、テロの恐怖とともに新たな火種を抱え込んだ。

 唯一の光明は、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞だ。分断と排除の論理がまかり通る世界に希望を見いだす。だが、7月に採択された核兵器禁止条約に、米国の「核の傘」に頼る日本はそっぽを向いている。

 ■日本の劣化も一段と■

 国内はどうだろう。政治は「不穏」、社会は「暗」に染まったといえば言い過ぎか。

 長期政権を視野に安倍1強政治が加速するも、学校法人森友、加計学園問題で「総理のご意向」や官僚の「忖度(そんたく)」があぶり出され支持率は急低下した。

 それでも北朝鮮の脅威を「国難」と強調する巧みな「印象操作」で10月の衆院選を自民党大勝で飾った。勢いを得て悲願の憲法改正を目指すが、北朝鮮への圧力を強めるほど拉致問題解決が遠のく。拉致40年。もう言い逃れは許されない。

 「明」と位置付けたいのが約200年ぶりの天皇陛下退位である。熟議の末に12月、19年4月30日と決定した。特例による一代限りの措置。皇位の安定的継承という難問を引きずるが、平和を祈る両陛下に国民はねぎらいの拍手を送るだろう。

 成熟社会の暗闇を象徴する事件も起きた。10月末以降、神奈川県座間市で9人の切断遺体が見つかった。自殺願望をツイッターに書き込んだのが端緒。危ういネット社会である。

 広告大手電通の新入社員過労自殺や日産、神戸製鋼所、三菱マテリアルなど大企業の相次ぐ不正発覚も衝撃的だった。新幹線のぞみの台車亀裂問題も同じ文脈にあり「ものづくり日本」の劣化を象徴する。

 ■福井を飛躍の聖地に■

 県内でも暗い事件があった。3月、池田中の男子生徒が校舎から飛び降り自殺。教員の厳しい指導が原因とされ、県全体で教育現場の見直しが進められている。未来を断ってまで「命を懸けた訴え」にどう答えを出すのか。重い責任を背負った。

 北陸新幹線の大阪までの全ルートが確定したのは3月だ。整備計画決定から実に43年余が流れている。ただ財源確保や多額の地方負担など難題山積みだ。

 原発マネーも先細り。高速増殖原型炉もんじゅに続き、関西電力大飯原発1、2号機の廃炉も決まった。かつての15基体制から8基へと縮小、地元財政に及ぼす影響は大きい。

 人口減が加速する中、限界を突き破るパワーの必要性を教えてくれたのが桐生祥秀(よしひで)選手だ。9月9日、県営陸上競技場で開催の日本学生対校選手権100メートル決勝で9秒98をマーク。ついに10秒の壁を破った。

 陸上の「聖地」は福井国体総合開会式の舞台になる。希望の未来へ県民も新たなスタートラインに立ちたい。

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