【越山若水】餅(もち)は杵搗(きねつ)きに限る、としきりにいわれるのは、コシがあってよく伸びるから。「でも、僕はこごめ餅が好き」と同僚が言うので思わず聞き返した。「こごめ餅?」▼初耳だ。聞き回ると、同じ福井県内でも呼び名が違ったり、食べる習慣がなかったり、と一様ではないらしい。ちなみに全国では、次のような名前で呼ばれる▼あらかね餅、うる餅、ぼろ餅、おふく、たがね餅、ごんだ餅、どや餅…。これらは全てもち米とうるち米を混ぜた餅で、同僚によればこごめ餅は「粒感がうまい」▼といっても主役はやはり、もち米100%の餅だ。文字通りモチモチしたあの食感を知ってこそ、粒々した歯ごたえをも楽しめる。日本人の餅好きを裏付ける証しかもしれない▼少し講釈を垂れてみたい。穀物には米と同じように、ある成分を含む粳(うるち)のものと、その成分が全くないか、少ししか含まない糯(もち)のものがある。基本が粳で、糯は変異体である▼糯の品種があるのは、例えばトウモロコシ、大麦、アワ、キビなど。どういうわけか日本などアジア地域の人々は、これらの糯品種を好み、栽培し続けてきたのだった▼驚いたことに近年、青森県で「もち小麦」の品種がつくり出された。それはギャンブルに等しいほど難しいことなのだという。食感はモチモチでツルツル。そう聞いて心が騒ぐ。日本人だなあと思い知らされる。

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