【越山若水】相撲がわが国の伝統的な格闘技であり、長く人々に親しまれたことは言をまたない。何しろ奈良時代の日本書紀に、天下の力自慢が決闘する様子が記録されている▼その後、豊作を祈る神事や宮廷行事として浸透した。その人気を端的に表すのが平安末期の「鳥獣人物戯画」。ウサギとカエルの相撲絵はあまりに有名である▼その場面を再現しよう。カエルがウサギの耳にかみつき、右外掛けで必死の攻め。次の瞬間、エイッと投げつけ気を吐くカエル。ウサギはズデンとひっくり返った▼観覧するカエルたちは笑い転げ、その笑い声まで聞こえてきそうだ。今をときめく日本漫画の原点といわれるその技巧は驚くばかり。ただこの戯画は何を風刺しているのだろう▼作家の半藤一利さんの見立てはこうだ。時は源氏と平氏興隆のころ。ウサギを朝廷側、カエルを武士階級と読み解けば、新旧勢力の権力闘争の図式となる(「大相撲人間おもしろ画鑑」小学館)▼平成の相撲界も大騒動だ。元横綱日馬富士関の暴行事件を巡る対応が異様に長引いている。どうやら相撲協会現体制と貴乃花親方の対立が背景にある▼片や慣例の踏襲、片や相撲道の追求。新旧勢力の対決ともいえる。貴乃花親方の処分はきのう出されたが、最終決定は年明けに持ち越し。事件発生から2カ月半、鳥獣戯画さながら、長尺の絵巻物のようである。

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