【越山若水】この寒いのに窓を開け放ち、家中を片付ける。ガラスや家電なども手当たりしだいに磨きあげる。片ときも休まない。家人にとって大掃除は、しないではいられない断固たる使命である▼当方の主な分担は、油でべとべとする換気扇。これが難物だ。気温が低いと油は固まるので落とすのに手こずる。やがて嫌気が差し、余計な想像を巡らす▼わが家も「断捨離」を実践してはどうだろう、と。「ミニマリスト」もいい。物に執着しないのが前者なら、後者は最小限の物で満足する。どちらにしても家財が減る▼これは大掃除をしたくない怠け者の言い訳である。そうではなく、このごろは生活を充実させるために物を減らす人が増えているらしい。望むのはホテルのような部屋だという▼無駄をどんどんそぎ落とす。その先にあるのは、禅僧の生活だろうか。ことわざにあるように「座って半畳、寝て一畳」の世界へ近づく。さて、それは本当に快適だろうか▼家事、掃除術の専門家の佐光(さこう)紀子(のりこ)さんは「遠慮しておきます」と著書「『家事のしすぎ』が日本を滅ぼす」(光文社新書)に俗人の本音を書いている▼むしろ佐光さんが薦めるのは「おばあちゃんの家」。物のあるなしに関係なく気取らず居心地のいい家。なるほど、と思い出してみた祖母の家はさっぱりと片付いていたものだ。やっぱり大掃除はするもの、か。

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