【論説】安倍内閣が2012年12月の第2次発足から26日で丸5年を迎えた。経済最優先を掲げた国政選挙で5連勝する一方、公約の前面には出さなかった特定秘密保護法や安全保障関連法、「共謀罪」法など国論を二分する法案を強引に成立させて「1強」批判を浴びた。外交では北朝鮮情勢を巡り米追従一辺倒に傾く。

 首相在職日数は第1次を含め歴代5位。来年9月の自民党総裁選で3選を果たせば、歴代1位も見えてくる。宿願の憲法改正も視野に入る。ただ、安倍内閣の突き進む先には、北朝鮮対応や改憲の国民投票などリスクもはらむ。情勢次第で“退場”を迫られる危うさもある。

 この5年、円安株高で企業収益は増え、名目国内総生産(GDP)や有効求人倍率などの指標は改善している。ただ、日銀の大規模金融緩和や、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的資金による投資に支えられた面は否めない。海外経済の回復という幸運にも恵まれたのは確かだが、「アベノミクス」の目標であるデフレ脱却には至っていない。

 国政選挙を勝つたび官邸主導体質は一層強まってきている。自民党内には安倍晋三首相の政策に「もの申す」気配はない。唯一、小泉進次郎筆頭副幹事長が、教育無償化で財界に資金協力を求めた首相の独断に「このままだったら自民党は必要ない」などと批判したが、財界の協力表明で騒ぎは落着した。

 「ポスト安倍」をうかがう石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長は存在感を示せないままだ。質問時間増を実現した衆院予算委員会などでは、自民党議員が首相や政策をべた褒めする場面が目立った。野党はと言えば、旧民主党は下野後、国民の支持を回復できず迷走。10月の衆院選を前に小池百合子都知事率いる希望の党との拙速な合流に走り、分裂の憂き目を見た。

 14年5月には内閣人事局を発足させ、官邸による官僚の幹部人事を一元化。生殺与奪を握られた官僚に忖度(そんたく)を働かせるような構造が出来上がった。この結果起きたとみられるのが森友、加計学園を巡る問題だ。

 外交ではオバマ前米大統領時の15年4月、安倍首相は連邦議会演説で、国会に提出さえされていなかった安保関連法案を「夏までに」成立させると公言した。大方の下馬評を覆し当選したトランプ氏に対しては、就任前に訪米し会談。今年11月の首脳会談では、トランプ氏が米国製装備品の大量購入を求め、首相もこれに応じた。

 内政は独善、外交は追従と逆向きの手法に映る。内政で「1強」のおごりが顔を出せば、改憲への国民理解は遠のくだろう。現に国民の多くが安倍首相の下での改憲を望んでいない。一方、パリ協定の離脱やエルサレムの首都問題でトランプ政権は孤立が深まるばかりだ。北朝鮮対応でどう出るか、懸念もつきまとう。首相は親密さをアピールするが、耳の痛い進言ができるかが問われよう。

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