【論説】越前市内の至る所で目にする写真のあどけない表情が、見る者の胸を締め付ける。3歳男児が行方不明になって半月余りがすぎた。

 警察や消防、消防団、防犯隊に家族の知人や会社の同僚、地域住民らが加わり、昼夜問わず懸命の捜索を続けてきた。いまだ手掛かりはないが、川への転落を示す痕跡や物証もないことから、家族は「きっと無事でいる」との思いを強くしている。「早く見つけてあげたい」という関係者の思いを共有したい。

 男児は9日午後2時ごろ、上太田町の駐車場に止めた車からいなくなった。父親が会社の用事で車を離れ、戻るまでのわずか10分間の出来事だ。駐車場は建物の裏側にある。表通りから死角になるが、男児を見つけて何らかの行為を及ぼすのは、待ち伏せでもしない限り至難に思える。

 男児が自ら車を降りて表通りへ向かったならば、目撃情報に期待をつなぎたい。土曜とはいえ車の通りは少なくない。3歳児が歩ける距離は知れているし、傘も差さず雨の中を1人でいれば気に掛かるだろう。

 表通りと反対側には吉野瀬川が流れる。車から川岸まで6、7メートル。柵などはなくのり面は急だ。雨は時折強く降り、増水した川の流れは速かった。雨が好きだという男児が、車外へ出て遊ぶうちに足を滑らせたという想像はできる。

 警察は当初から事故、事件両面で捜査してきた。ただ週末降り続けた雨が、駐車場や川の周辺にあるべき痕跡を消したとみられる。警察犬、鑑識は能力を十分に発揮できなかった。

 下流で合流する日野川、九頭竜川河口まで陸と空から捜し、機動隊が川の堰(せき)などで潜水を繰り返したが、靴一つ見つかっていない。一帯での検問、ドライブレコーダー、防犯カメラ、河川監視カメラからも有力情報は得られなかった。

 周辺の聞き込みは不在者がいれば、会えるまで訪問し、空き家、空き部屋、倉庫などくまなく調べている。人間関係のトラブルがないか家族、関係者から聴き取ったが、特筆すべき因縁は見当たらないという。

 家族の深い苦しみが続く中で救いは人の情や温かさか。捜索に関わった知人、住民らは延べ2千人を超す。「親の気持ちを思うと」と声をそろえ労を惜しまず協力し続けている。情報を求める張り紙、チラシは周辺市町でも目にする。

 電柱のチラシはフィルムで覆い、ひもで縛ってある。風雨に破れたり飛んだりしない工夫だ。固い結び目に支援者の思いがにじむ。

 幸い住民の関心は高い。警察の検問にもドライバーは協力的と聞く。それでも見逃しや盲点はないか。3歳児は小さなすき間や穴にも入る。川に落ちたイメージが先行したが、連れ去りの可能性は捨て切れない。近所に小さな変化はないか。情報の一つ一つが解決につながればと願う。
 

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