【越山若水】20年前である。「月刊オール川柳」の1997年4月号で、この句が特選として発表されると、大変な物議を醸したという。確かに川柳らしくない直球そのものだ▼紹介するにも勇気が要る。「老人は死んで下さい国のため」。作者は当時77歳の宮内可静(かせい)。心中を推し量れば、生きづらい浮世へ満身の皮肉を投げたのだろう▼第2の宮内が現れるかもしれない。生活保護費が来年度から見直され、65歳以上の単身世帯の8割近くが減額される。最低限度の生活も無理、との悲鳴が聞こえる▼お年寄りだけではない。子どものいる世帯の4割も受給が減らされる。ひいては、子どもの就学援助を受けられる対象世帯が少なくなるといった影響が、あちこちに出るという▼何か見立て違いをしていないだろうか。減額するのは、働いて最低限の生活をしている家庭より、生活保護だけで暮らす家庭の方が収入が多いからだという。不公平だろう、と▼本当にそうだろうか。生活保護を受ける資格があるのに「お荷物になりたくない」と無理をしている人が実は少なくない。比べること自体が間違ってはいないだろうか▼貧困問題の第一人者の湯浅誠法政大教授が、ネットの対談で明かしている。家庭訪問に行った先の話だ。外からは普通と見えたが、実は母親が自分の食事を抜いて生活していた。いまの貧困は「見えにくい」と。

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