【論説】2018年度予算案の防衛費が過去最大の5兆1900億円に上る見通しだ。当初予算での増額は安倍政権下で編成した13年度以降6年連続となる。政府は緊迫化する北朝鮮情勢への対応強化を掲げるが、厳しい財政事情の中で、説明責任を果たすべきであり、活発な国会論議を求めたい。

 とりわけ、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の2基導入は、取得費1基当たり1千億円弱と高額な一方で、費用対効果に疑問の声もある。戦闘機に搭載する長距離巡航ミサイルの導入は「敵基地攻撃」能力を持つことになり「専守防衛」に反するとの批判を受けかねない。

 予算案では関連費用などが計上される見通しだが、本格導入となれば、防衛費はさらに膨れ上がることになる。米国製の装備に頼る構図は、トランプ米大統領の「ディール(取引)」外交におもねるばかりだ。重要なのは、いかなる戦略で国を守り、装備の充実を図るかであり、その観点から必要か否か、真剣に検討を加えるべきだろう。

 イージス・アショアを巡っては、17年度補正予算案に米国からの情報取得費28億円、18年度予算案には基本設計費を含め7億3千万円を計上する。当初1基800億円としたが、今月になって1千億円弱と説明。レーダーなど装備の性能によりさらに高額になる可能性にも触れた。米国の見積額に基づく前払い制だけに「言い値」になりかねず、跳ね上がる懸念もある。

 既存のイージス艦では手が回らないといった状況もあるのだろうが、運用開始は23年度としている。ミサイル防衛の整備は必要だが、6年後の情勢をどう見ているのか示すべきだ。小野寺五典防衛相は「国民の要請」と強調したが、トランプ氏の要請に応えるだけではないか。イージス艦の増強計画もあり、整合性を図るべきだ。

 さらには、北朝鮮が同時多発発射した場合、全て迎撃できるかも未知数という。配備先の候補地に挙がった秋田市と山口県萩市の住民からは「逆に攻撃の的になる」との不安の声もあり、地元理解が課題だ。

 長距離巡航ミサイルに関しては関係費用約22億円を追加要求した。敵基地攻撃能力の保有の早急な検討を今春、政府に提言した自民党検討チームの座長が小野寺氏だった。防衛相に就任し、提言の推進役にかじを切ったとも考えられる。

 米国が「矛」、日本は「盾」の関係を逸脱し、国際的に日本が「専守防衛」の基本原則を転換させたというメッセージを発することにもなる。政府の統一見解では、必要最小限の敵基地攻撃は「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としているが、長年、攻撃用武器は保有しないとの方針を堅持してきた。

 安倍政権は北朝鮮の脅威を殊更あおりながら、これまで手を付けられなかったタブーに踏み込むような気配も漂う。年明けから見直し作業が本格化する「防衛計画の大綱」を注視する必要があるだろう。
 

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