【越山若水】江戸の年中行事でとりわけ重要なのが煤払(すすはら)いだった。幕府が12月13日と定めたこともあり、一般人もこれに倣って一斉に大掃除。新しい年を迎える準備を整えた▼「そつと持ち出せ海鼠(なまこ)だと十三日」。川柳子はぐにゃぐにゃになった古畳を海鼠に例える。「手の甲へ餅(もち)をうけとる煤払ひ」。1年の汚れは想像を絶するらしい▼「煤払ひのあした汚れた名を雪(そそ)ぎ」。赤穂浪士の討ち入りは、ご存じ14日のこと。ただ気ぜわしいご時世ゆえ、最近は年が押し詰まってからの大掃除が慣例である▼大みそかまで10日余りとなったきのう、京都市の西本願寺と東本願寺で恒例の煤払いが行われた。僧侶や門徒がお堂の畳を竹の棒でたたくおなじみの光景で、舞い上がったほこりも尋常ではなかった▼2017年もいよいよ最終盤。今年の出来事をじっくり、しみじみと振り返りたいところだが、気がかりなニュースがひっきりなし。国内では政治家や企業の不祥事が続く▼海の向こうでは、北朝鮮のミサイル発射という物騒な話。米大統領は安保戦略に「力による平和」を掲げ、中国とロシアをライバル強国と名指しした▼機に乗じて、日本では憲法9条改正の動きが次第に勢いづいている。庶民派で川柳にも似た俳風の小林一茶も憂いの多い浮世にウンザリした様子。「むちやくちややあはれことしも暮(くれ)の鐘」。なぜか同じ気分である。
 

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