自然科学に関して調査している高津琴博さん。作業小屋は昆虫や化石、水生生物などの標本がひしめく=11日、福井県大野市内

 福井県大野市の専業農家、高津琴博さん(53)が約40年間にわたり昆虫の標本作りに取り組み、標本数は約4万点に上る。時間を見つけては市内を中心に収集や調査に出掛け「生物の多様性や自然物を通してその時代の環境を記録できる。過去と比較すれば変化も感じ取れる」と昆虫の魅力のとりこになっている。

 小学4年生の時、下校中に見つけた「ルリボシカミキリ」の色の美しさに魅了され標本の世界に足を踏み入れた。「何という生き物なのか、ただ知りたい欲求に駆られた」と休みの度に自転車を走らせた。関心は身近な存在だったトンボからチョウ、他の昆虫たちへ広がっていった。

 中学時代には化石、高校、大学では地質について学び、生き物と地質を総合的に捉えるようになった。「地史で地形が決まり、地形で気候が変わる。その変化が植物や生き物に影響することが分かりバラバラだった標本たちが結び付いた」。現在は県環境アドバイザーや国交省河川水辺の国勢調査アドバイザーなどを担いながら、生物や化石、岩石を集め、今の環境を記録し続ける。

 標本には県内初記録というカメムシの仲間「ハウチワウンカ」もあるが、「温暖化や環境破壊といった今の環境変化は、普通に生きていた種が突然いなくなる時代」と近くの田んぼに住む生物や、家の中に飛び込んできた虫など、身近な生き物に重きを置く。

 ここ数年、ミツバチなどハチ全体の個体数が減っている印象とし「居るべき場所にいない。自然豊かな大野でも身近な環境は悪化しているのでは」と話す。

 奥越地域の自然科学全般を調査・研究している市民団体「大野地球科学研究会」にも所属し、主に市内の地質を調べている。「大野は幅広い年代の地層がそろい全国的にも珍しい。市全体が研究フィールドになる」と自然科学への関心は尽きない。今後は、後継者の育成にも力を入れたいとし「標本は生物の多様性や環境を知る上でとても大切。標本や活動を次の世代につないでいきたい」と膨大な資料を見つめた。

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