見谷大亮さん、明希子さんに見守られ、笑顔をみせる紘ちゃん=福井県鯖江市内

 医療機器を備え、医師らが同乗して救急現場に急行する「ドクターヘリ」について、福井県の西川一誠知事が12月県議会で近隣県との共同運航を前向きに検討する考えを示した。無邪気な笑顔をみせる見谷紘ちゃん(1歳9カ月)=福井県鯖江市=は、ドクターヘリで心肺停止状態から奇跡的に回復した。元気に成長しているが、腹部からチューブで栄養を摂取する「胃ろう」を付けており、保育所に入所できずにいる。「友達と元気に遊ばせたい」。命を救い、家族の願いに応える環境が、福井ではまだ整っていない。

 昨年8月、紘ちゃんは母の明希子さん(34)の実家がある滋賀県近江八幡市に帰省していた。発熱と母乳の吐き戻しがあり、当初は夏風邪と診断された。血液検査で炎症反応が見つかり、9月の2度目の入院直後に状況が一変した。

 それまで元気だった紘ちゃんがぐったりし、呼吸が急に悪くなった。心音などに異常はなく、小児科の主治医や外科医も原因が分からなかった。紘ちゃんが集中治療室に移った後、明希子さんに医師が告げた。「(紘ちゃんは)頑張れないかもしれない」

 紘ちゃんは重い呼吸不全、心不全に陥り、一時は心肺停止状態になった。人工肺による治療が必要だったが、滋賀県内には乳児に処置できる病院はなかった。関西でも有数の小児の集中治療施設がある神戸市の病院に搬送するため、滋賀県に配備されていたドクターヘリが出動した。

 明希子さんはヘリに同乗し、早く着くように祈りながら、真っ白なわが子の顔と近くの時計を交互に見つめた。「ヘリの中で医師や看護師の方がずっと処置したり、声を掛けてくれたりしたので、パニック状態でも少し安心感がありました」

 約30分で到着した後、検査で心臓の弁を支える筋が突然切れて血液が逆流し心不全になる病気だと分かった。乳児がまれに発症し、すぐに手術できず突然死の原因にもなる。弁を修復する緊急手術を受け、紘ちゃんは命をつないだ。明希子さんは「近くに神戸のような病院がなく、ドクターヘリもない福井県では助からなかった」と話す。

 ドクターヘリは、本年度内に運航予定の鳥取県を含め、全国43道府県で活動している。石川県も来秋に導入する方針で、未配備は福井県のほか、東京都、香川県だけになる。

 紘ちゃんの父、大亮さん(35)は消防士で、現在は県防災ヘリに乗り込んでいる。「防災ヘリでも患者を搬送しますが、容体がある程度安定している場合だけ。医師が搭乗せず、設備もなければ、ただ運ぶだけしかできない」と導入の必要性を訴える。

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