【論説】なぜ、昨年のリオデジャネイロ五輪前にこの決断ができなかったのか疑問も残るが、国家ぐるみのドーピングに断罪を下したことは評価していい。

 国際オリンピック委員会(IOC)が、ロシア・オリンピック委員会(ROC)を資格停止処分とし、来年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪から同国選手団を除外する決定を下した。加えて関与を否定してきた当時のスポーツ相のムトコ副首相を五輪から永久追放した。一方、潔白な選手は保護し「ロシアからの五輪選手」として参加を認めた。

 厳しい処分にロシア側の反発は必至だったが、プーチン大統領は「われわれにも一部悪い点があった」と非を認め、個人資格での参加には「選手たちが望むなら、それを阻んだり邪魔したりすることはない」と述べた。ROCは12日にも判断するとしているが、政権トップがボイコットする可能性を否定したことで、東京五輪・パラリンピックにも影響しかねない最悪の事態は回避されそうだ。プーチン氏には全容解明への協力と、スポーツ大国の再生を図るよう望みたい。

 ロシアで陸上競技を中心にドーピングが組織的、恒常的に行われていることを独メディアが伝えたのは3年前だった。それを受け世界反ドーピング機関(WADA)が調査に着手。自国開催の冬季五輪で自国選手の活躍による国威発揚を狙って不正が横行していた実態が明らかになった。

 WADAが数々の指摘をしていたのにもかかわらず、IOCは昨年のリオ五輪では処分を見送り、判断を陸上や水泳など個別の国際競技連盟に委ねてしまった。国際パラリンピック委員会が全面的な参加差し止め処分を下したのに対して、IOCは弱腰だと、猛烈な批判を浴びた。

 今回の処分は、遅きに失した感が否めないが、その後の調査で具体的な証拠などがそろい、確信を持っての処分といえる。政権中枢の副首相の永久追放は、スポーツの世界への政治介入は絶対許さないという強い警告を発したものだろう。

 ただ、厳しい条件をクリアして潔白を証明した選手に「ロシアからの五輪選手」の名称を付けたユニホームの着用を認めたのは、ロシア国民の反発を和らげる狙いもあるのだろう。これまでは国名のない純白のウエア着用が課せられていたという。

 国旗や国歌は禁じられ、プーチン氏は先月、国旗を使用できないことに「ロシアへの侮辱」と述べたが、一定程度の配慮も見せたIOCの対応を受け入れたようだ。バッハ会長の「ボイコットは何も生まない」との発言は重い。

 韓国民の関心の低迷や、北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念などで平昌五輪は苦境にある中、ロシアの不参加回避は朗報だろう。ただ、「潔白」の選手がどれほどいるかは見通せない。不正が疑われる国は他にもあるとされる。今回の処分を根絶に向けた大きな一歩と捉え、さらなる取り組みを求めたい。
 

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