【論説】他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の有害性は議論の余地がない。福井県でも県医師会など12団体で組織する受動喫煙防止対策協議会が10月、「ふくい受動喫煙ゼロ宣言」を採択した。医療機関や公共施設の敷地内全面禁煙などを掲げている。問題は飲食店における喫煙問題だ。協議会では「最終的に全ての建物内完全禁煙」を定めた禁止条例の制定を目指すという。

 どう実現するのか。気になるのは国の動きだ。

 厚生労働省は今後6年間のがん対策の基本計画で、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに行政や医療機関は無論「飲食店の受動喫煙ゼロ」目標を設定するために調整を続けてきた。

 厚労省が3月に公表した健康増進法改正案では、建物内は原則禁煙とし、例外的に飲食店面積が30平方メートル以下のバーやスナックに喫煙を認めるとした。業界へ一定の配慮だが、自民党はこれにも反発。150平方メートル以下の飲食店に緩めた対案を示し協議が決裂した。だが、結局は厚労省が押し切られる形になった。

 新案では、飲食店内は専用の喫煙室を除き原則禁煙だが、150平方メートル以下なら店の判断で喫煙可とできる。新規開業や大手チェーン店舗では喫煙を認めず、既存店舗に限定する臨時措置と位置付けた。見直しの時期は設けていない。

 厚労省は来年の通常国会に改正案を提出。来春にも成立させ、東京五輪前の20年4月からの施行を目指しているようだ。しかし、都内の飲食店では150平方メートル以下が大半を占めるとの指摘もある。これでは骨抜きの「ざる法」である。

 早期合意を優先した妥協の産物だろうが、政治的思惑があまりに強い。原則禁煙にこだわった塩崎恭久前厚労相が8月の内閣改造で退き、加藤勝信氏が就いた。「調整型」とされる安倍晋三首相の側近中の側近だ。「首相のご意向」が働いている可能性もある。

 医師会や患者団体からはより厳しい喫煙規制を求める声が出ており、自民党内にも規制推進派がいる。「例外なき屋内禁止」に7割が賛成という学者らのアンケート結果もある。世論の批判はさらに高まろう。

 公共の場での屋内全面禁煙を法律で定めている国は約50カ国ある。日本は世界保健機関(WHO)の評価で4段階中の最低レベルだ。WHOは受動喫煙防止の有効な対策は屋内の全面禁煙しかなく、分煙や喫煙室に完全な効果はないと指摘する。国際基準に程遠い日本の緩慢な政策を推し進めることは愚かしい。

 WHOと国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのない五輪」を目指し08年以降、罰則を伴う喫煙規制を導入した。このままでは、東京五輪は最悪の五輪になってしまう。

 東京都は不特定多数が利用する施設を原則、屋内禁煙とする罰則付きの受動喫煙防止条例を制定する方針だ。本県も来秋開催の福井しあわせ元気国体に向け、もう一歩踏み込んで「ゼロ宣言」を実行したい。

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