【越山若水】朝鮮は伝説や民話、格言が豊富な国で、そこから「俗談(ソクダム)」と呼ばれることわざも多く生まれたという。現在でも庶民の会話に頻繁に登場し、欠かせない存在らしい▼俗談は知識人より、むしろ民衆に愛されてきた。その理由を在日朝鮮人作家の嚆矢(こうし)、金達寿(キムダルス)さんは「世界の故事名言ことわざ」(自由国民社)で指摘している▼朝鮮の歴史は古来、外からの侵略、つまり外圧と抵抗の繰り返しだった。さらに民衆には内圧も重なって、俗談は生活から編み出された「知恵の言葉」でもあった▼例えば「虎のいない所では狸(たぬき)が虎になる」。暴君が去っても別の主君が現れ搾取する。「腕は内へは曲がるが、外へは曲がらない」。権力者はお金も食糧も自分の方に取り込むが、人には与えない▼圧政に苦しめられた民衆の願望は現実的だ。「死ぬのは悲しくないが、痛いのが悲しい」。死は誰にも訪れるから仕方がないが、生きていてろくに飯も食えない方が悲しい▼北朝鮮からとみられる木造船が次々と漂着している。日本海の大和堆(たい)付近で操業中に荒天のため漂流したようだが、船体は見るからに老朽化している▼軍事力を誇示して北朝鮮は1発数億円以上とされる弾道ミサイルを発射する。一方で漁民には食糧確保のため無謀な漁獲を命ずる。俗談「十人が言っても聞く人の考え一つ」。民衆は独裁に苦々しい思いだろう。

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