福井県高浜町内8カ所を巡回診療している井階友貴さん(左から2人目)。病状だけでなく、暮らしの悩みを相談する場にもなっている=10月、同町の関屋集会所

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 井階さんは、地域医療を続ける方策として「医師の教育の提供」を第一に挙げる。町と福井大は連携し、09年度から同診療所などに、同大医学部の講座を開設。井階さんは同大講師として、学生や研修医に外来、巡回、訪問診療など地域に寄り添う医療を教えている。

 学生たちを呼び込むために、海水浴場での救護体験と地域医療の研修を組み合わせたツアーの企画やホームステイなど、ユニークな仕掛けも実践。学生や研修医の数は08年度は48人だったが、16年度は122人になった。そして、ここで研修を受けた医師ら3人が今年4月に移住し、活動の輪に加わった。

 09年には地域医療のためにできることを実行する有志団体「サポーターの会」が発足。月に1度は健康について語り合う「健高カフェ」を開いている。井階さんが目指す「地域全体で医療を支える」形ができつつある。

 肺炎を治療した高齢者から「治ってもまた苦しむかもしれない。そのままにしておいてくれたらよかったのに」と言われるなど、現実を突き付けられることもある。井階さんは「地域医療とは病気を治すだけでなく、近い距離で安心感を与えてあげること。生活や人生を支えてあげること」と話す。

 巡回診療の関屋集会所。終わりかけに、90代の女性がふらりとやって来た。「先生に会いたかったんや。頭は痛いし、急に(胸が)ドンドンしてきた。私は先生に家に来てもらって死にたいんや。頼むの」。井階さんは言葉の代わりに、穏やかな笑顔でこたえた。

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