【論説】大相撲の平幕貴ノ岩関に暴行し負傷させた問題で、横綱日馬富士関が現役引退した。範を示すべき横綱の品格が問われる異常な事件である。予想はされたが、警察捜査や日本相撲協会の調査が進む中で、横綱審議委員会の厳しい処分は確実の情勢となり、追い込まれての引責だ。

 日馬富士関は、記者会見で「弟弟子の礼儀のなさを正し、教えることが先輩の義務」と態度の悪さを暴行の理由に挙げた。その心情は理解できなくもない。

 しかし、角界にはこれまで力士暴行死亡事件をはじめ暴力の横行、大麻汚染、賭博、八百長事件など不祥事が続出している。

 伝統ある国技であり、多くのファンに支えられてきた。横綱一人の問題として幕引きは許されない。角界全体で再発防止に全力を挙げるべきである。

 世間を騒がせた事件は、10月下旬に巡業先の鳥取県内での食事会で発生。モンゴル出身力士らが交流を深めるはずの場が暗転した。

 捜査関係者によると、日馬富士関が貴ノ岩関の態度に腹を立て、素手やカラオケのリモコンで殴ったことを認めた。貴ノ岩関の師匠貴乃花親方が被害届を提出し、県警が捜査を始めたことで、同席していた白鵬、鶴竜両横綱からも事情聴取するまでに発展した。

 当初はビール瓶で殴り頭部骨折との情報も流れた。実際、骨折はなく外部理事を含む相撲協会危機管理委員会の調査で、九州場所初日からの出場が可能との診断見解も示されていた。

 それにしても、なぜこれほどまでに混乱したのか。

 問題の根源は協会執行部の保守的体質にあるのではないか。事件のうわさは瞬く間に各部屋に伝わり、幹部の耳にも入っていたはずだ。すぐに当事者を呼び、事実確認すべきだった。

 事件発生は10月25日夜から26日未明。29日に被害届提出、翌日には協会危機管理部長が電話聴取したものの、そのまま11月12日に九州場所が始まった。貴ノ岩関は休場、日馬富士関は事件が発覚した14日まで土俵に上がっていた。

 9月の秋場所で優勝した東の正横綱だ。協会内には処遇に慎重な意見も出た。興行への影響を懸念し、内密に片付けようとしたとすれば、ガバナンス(統治)の欠如が問われよう。

 巡業部長という要職にある貴乃花親方の行動も解せない。協会に被害報告をせず、危機管理委による弟子の聴取要請も拒否。昨日の理事会では「警察の捜査が終わった段階で協力する」と述べるにとどまった。たとえ協会不信があろうと、真実に向き合わずして真相究明ができるはずもない。

 相撲協会は八百長問題で大きな代償を払った後、反社会的勢力からの接触を断つ研修会を開くなど、体質改善を図った。しかし、人格形成の教育や倫理観の養成など大事な研修が不十分である。コンプライアンス(法令順守)を重視し、いかに自覚と自浄能力を高めていくかだ。親方任せという慣習を捨て、抜本的な立て直しを求めたい。
 

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