【論説】北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射させた。2カ月半の沈黙の間、トランプ米大統領がアジア歴訪で各国の北朝鮮への圧力強化や包囲網構築に躍起となり、今月20日には9年ぶりの「テロ支援国家」再指定にも踏み切った。

 この間、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は米本土も射程にする新型のICBMの開発を着々と進め、発射のタイミングを計っていたということだろう。トランプ氏は「真剣な対応は変わらない」とし、最大限の圧力をかけ解決を目指す決意を示したが、内心は穏やかではないはずだ。

 北朝鮮メディアが発表した政府声明によると、火星15の最高高度は4475キロに達し、950キロ飛行した。通常より高い角度で打ち上げ飛距離を抑える「ロフテッド軌道」とみられる。米専門家によると、通常軌道なら飛距離は1万3千キロ以上に達する。米東海岸、首都ワシントンも射程に入る飛距離だ。

 金委員長が立ち会い、初めて「核戦力の完成」を表明したが、専門家の間では、核弾頭の大気圏再突入技術の開発などには至っていないとの見方があり、「核戦力完成」は国内向け発揚のための宣言の可能性が指摘されている。今後もさらなる発射実験を続ける恐れもある。

 だが、「超大型の重力級核弾頭が搭載可能」とも発表し、いずれ「核戦力完成」が現実となるなら、米国は戦略の見直しも迫られる。米国内では軍事力行使を求める声が高まることは必至だ。予測不能のトランプ氏が唐突な策に打って出る可能性も否定できない。

 一方、「核戦力完成」となれば、核・ミサイル開発に区切りをつけ、対話に乗り出す可能性はないだろうか。国連決議や米の単独制裁などの効果が出始めているとの観測もある。ティラーソン米国務長官は「北朝鮮ではガソリンを求めて長い行列ができている」と備蓄燃料が底を尽きかけているとの見方を示した。

 さらには、秋田など日本海側に北朝鮮籍とみられる木造船の漂着や漂流が相次いでいるのも、北朝鮮当局が食糧不足の解消や密輸による外貨稼ぎのため、冬場でも操業を強いているからだとされる。末端の国民の生活はかなり疲弊してきているのではないか。

 日米韓や中ロは北朝鮮からの対話のシグナルを慎重に見極めるべきだ。ただ、対話のテーブルに着くといっても北朝鮮の最終目的は核保有国として「力の均衡」を誇示し、米国と対等に渡り合うことにあるはずだ。暴発に追い込むことなく、どう対話による解決への糸口を見つけ出すか。米国の対北戦略が問われる。

 圧力に前のめりになる安倍晋三首相は「誰も紛争など望んでいない」とも述べ、「北朝鮮が政策を変え、対話を望むまでかけ続ける」と強調している。金委員長は果たして「政策を変えたい」と言ってくるだろうか。どの段階で対話を模索するのか、首相は明確な道筋を示すべきだ。
 

関連記事
あわせて読みたい